歯がなくなったあの人に伝えたい本当の危険 失ったまま放置していると大変な目に遭う

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それによると、65歳以上の人で、20本以上歯が残っている人は10~19本残存している人に比べて死亡率が1.3倍低く、0~9本しかない人と比べると1.7倍も死亡率が低くなることがわかりました。

つまり、自分の歯がたくさん残っている人ほど、全身疾患にかかるリスクが低くなり、長生きできる、ということが分かったのです。このような研究結果は世界中で次々に証明されてきています。

長生きと密接に関係する歯の機能は、歯の根っこの先にある「歯根膜」(しこんまく)という組織です。歯根膜はたくさんの役割を担っている組織です。歯にかかる力を和らげるクッションの役割をしたり、お肉が柔らかいとか、フランスパンが硬いなどの物の硬さを精密に感知したりする優秀なセンサーでもあります。口の中にはたくさんのセンサーが存在しますが、歯根膜はかむときに非常に重要な役割を果たします。

かむことによる歯根膜への刺激は、脳の中枢に送られ、脳の中の「運動」や「感覚」をつかさどる部分や「記憶」「思考」、そして「意欲」に関係する部分まで活性化させることがわかってきました。

かむということが、歯根膜を刺激し脳を活性化させる。これが重要なんです。よくかみ、脳に刺激を送ることが認知症予防にも運動機能低下予防にもつながります。歩けなかった人が、歯を治してよくかめることになったことによって、庭仕事ができるまでに回復した事例もあります。歯を治しただけではないのかもしれませんが、歩けるようになった一つの要因ではあると思います。

もう一つ重要なことは、咀嚼(そしゃく)することによって内臓年齢が若くなること。昔から言われているように、しっかりとかむ回数を増やして食事することは重要です。唾液も多く出てきますし、内臓の負担も減らします。内臓の負担が減れば内臓を若く保つことができます。内臓年齢を若く保つことも健康寿命を延ばす秘訣です。できるだけ、お口に入れる物を小さくしたり少なくし、かむ回数を増やして食事をするよう心がけてみましょう。

歯がある人とない人での健康状態の比較

歯がある場合とない場合、単なる寿命だけでなく、健康寿命(普段の生活で介護を必要とせず健康で自立した生活のできる寿命)に大きな違いが出ることがわかっています。単に寿命だけが長くなっても要介護や認知症の期間が長いと、本人のみならず、家族にも大きな負担がかかってきます。

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