唯一無二のビジネスモデル フルヤ金属の真骨頂
「ルテニウム精製(リサイクル)設備の能力倍増へ」。昨年4月、1枚のニュースリリースが、白金系レアメタルの1種、ルテニウム相場を急落させる“事件”が起きた。ルテニウムは年間産出量が29トン(2006年)と、金の80分の1しかない希少貴金属。1990年代まではほとんど需要がなかったが、00年以降、ハードディスクのターゲット材(成膜用材料)として、突如急浮上した注目の素材である。
このところハードディスク業界では、新記録方式への移行により、1枚当たりのルテニウム使用量が一気に10倍へ激増していた。それを受け、ルテニウム相場は06年秋の1グラム800円から、翌2月末には3500円にまで急騰。そこに現れた1枚のリリースで、資源枯渇懸念が払拭されるや、相場は一気に下落。同7月には1グラム1500円の水準に落ち着いたのである。原材料コストの暴騰という危機的状況をひとまず回避した昭和電工などハードディスクメーカーは、一様に胸をなで下ろした。
一連の動きの主役はフルヤ金属。年商200億円強、上場2年足らずの会社だが、共同研究を行う大学や独立行政法人の間では、通称「イリ・ルテのフルヤ」。ルテニウム・ターゲット材と並ぶ主力製品のイリジウム製るつぼでは、国内シェア約9割を独占する、隠れた王者だ。
技術の粋を守る厳戒態勢 開発者名もオフレコ
茨城県つくば市にある精製工場。ここがフルヤの“錬金術”の舞台だ。この工場に、顧客の化学メーカー等から使い古して摩耗したるつぼやターゲット材が連日運び込まれてくる。フルヤはこれをいったん高純度の粉に戻し(精製)、再び製品へと成形して出荷している。つまり、レアメタルのリサイクル事業である。