ある日、東北出張から戻ってきたとき、自分のデスクの上にあった安宅さんの本に、安宅さんの直筆サインとともに、“脱・犬の道”と書いてあることに気づいた。
「出張に行くのはいいけれど、犬の道にハマっちゃいけないよ」ーー。そんな、安宅さん流の激励だったんだと受け取っている。
ふと気づけば、僕らは資料作りが格段にうまくなっていた。プレゼンテーション用の資料は、以前から須永が全部作ってくれていたのだが、それが面白いくらいレベルアップして変わった!と社内の一部では話題にさえなった。
本質からズレていないか?
僕自身では、入塾して鍛えられ、一番変わったのは、「考え方の整理」の部分だ。
それまでは、さまざまな人から話を聞くと話題が広がって本質から少しずつズレたり、議論を重ねれば重ねるほど考え方が散ってしまう面があった。それが本質的な軸ということで整理すると、話のズレや絞り込みの必要性が、すっと見えてくるようになったのだ。
ただ、一般のビジネスマン向けに「脱・犬の道」を教え説いて、なんて言われたら、困ってしまう。僕自身は、まだまだ「安宅塾」の見習いにもなれていないレベル。本当ならこういうことを書くのもおこがましくて、手がぷるぷる震えている。もし卒業できたら、もうとっくに復興支援室は黒字化できているかもしれない(笑)。
それでも、「安宅塾」なくして今のプロジェクトはなかっただろう。
問題にきちんとフォーカスできず、何がカギかをしつこく考えることもなく、日々、目の前の依頼に対応するだけで一杯一杯となり、それだけで終わっていたかもしれない。
ヤフーが東北から求められていること、ヤフーとしてやらなくてはいけないこと。おぼろげだった課題が徐々に整理することで見えていき、具体的な企画に落としこめるようになっていった。
ちなみに、今回この原稿に目を通した安宅から、「明らかに課題が山積する被災地でお役立ちするにあたって、本当にヘソになる課題を考えて走る。このことの大切さを強く意識して走る姿を、長谷川さんたちに期待しています」とのコメントをもらった。
これまたハードルが高くなった。じゃ、くぐりますか……。
(構成:渡部 由美子)
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