コメダ珈琲、高齢者を虜にする「もう1つの顔」 愛知県内のみで展開する「和風喫茶」の潜在力
しかし、これはおかげ庵に限らず、コメダ珈琲店にも言えることだ。コメダ珈琲店は「街のリビングルーム」というコンセプトで、回転率勝負のファストフードとは一線を画し、ゆったりくつろいでもらう空間を目指している。そのリズム感が年配の客に好まれている。
おかげ庵も同様で、ウェブサイトには「ゆっくり落ち着いて甘味を楽しむ『時』と、心温まる『間』を提供いたします」というコンセプトを掲げている。
メニューはコメダ珈琲店以上に多彩だ。あんみつやぜんざいなど和風甘味はもちろん、コメダ名物の「シロノワール」は抹茶味のソフトクリームを乗せたものも用意している。食事メニューには、うどんや雑炊のほか、「なごやめし」として有名なあんかけスパゲティまである。
さらに、おだんごやいそべ餅は、専用の卓上焼き台を使って自分で焼いて食べることができる。
車いすの高齢者2組、どうやって店にやって来た?
もちろん中京地区の喫茶店に不可欠のモーニングサービスもある。ドリンクを注文すると、トースト、ゆで卵、小倉あんがついたおなじみのセット以外に、和風喫茶らしくおにぎり、味噌汁、わらび餅からなる和風セットも用意されている。
自分で焼くというところに惹かれ、おだんごを注文してみた。しばらくすると、真っ白なおだんご3本と焼き台が運ばれてきた。おだんごを焼き台の上に置き、途中で裏返しつつ待つひとときは、確かに慌ただしい生活を忘れさせてくれる。東京の喫茶店では、このような時間を要するメニューは難しいだろう。おかげ庵の特徴を体感できるメニューだった。
ほどなくして隣のテーブルに、女性の2人連れがやってきた。会話から想像すると親子のようだ。お母さんと思わしき年配の女性は席に着くなり、「素敵なお店じゃない、これからも連れてきてよ」と口にしていた。2人は久しぶりに会ったらしく、近況を伝え合うだけでなく、思い出話にも花を咲かせていた。時間を忘れて、こうした会話を交わすのに適したお店なのかもしれない。
ひと息ついたところで会計を済ませようと席を立つと、入れ替わるように車いすに乗った高齢者が2組入ってきた。どうやってお店に来たのだろうか。気になって店を出ると、すぐに状況が分かった。デイサービスのワンボックスカーが止まっていたからだ。
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