ワタミは外食事業の赤字を解消できるのか 介護事業の売却で財務は改善したが…

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清水邦晃社長は断腸の思いで介護事業を売却、国内外食事業の建て直しに取り組む(撮影:風間仁一郎)

「外食事業がまだ赤字であることは問題であると十分に認識している。今後は総合居酒屋だけでなく、専門居酒屋やカフェ、食堂まで、客のニーズに応えていきたい」。

居酒屋大手ワタミの清水邦晃社長は11日、前2016年3月期決算の説明会でこう述べた。ワタミの2016年3月期の売上高は1282億円(2015年3月期比17.4%減)、営業損失2.9億円(15年3月期は営業損失20.7億円)、当期純利益は78.1億円(同128.5億円の損失)だった。介護事業の売却益151億円により、純利益は3期ぶりに黒字化したが、営業利益は2期連続の赤字となった。しかし、配当は介護事業の売却益を還元する形で10円を実施する(2015年3月期は無配)。

前期は財務の悪化から、2015年12月に収益柱のひとつだった介護事業を損保ジャパン日本興亜ホールディングスに売却した。「介護事業に10年間携わっていた身としては断腸の思いだった」と清水社長は言う。2016年3月には、メガソーラー事業をCSSに売却した。介護事業の売却により112億円、メガソーラーの売却により90億円の有利子負債を圧縮した。

また、2016年2月には、コメ卸最大手の神明ホールディングと資本業務提携。ワタミが保有する自己株式約10%のうち、約4.2%を14億円で神明HDに売却し、外食店舗の業態転換に伴う改装費用を調達した。2015年9月に5.9%にまで落ちこんだ自己資本比率は2016年3月末には36.9%まで回復、50億円だった現預金は190億円まで積み上がった。

イメージ悪化で既存店は大きく前年割れ

財務については窮地から脱したが、収益回復の道のりは険しい。前期は宅食、介護の2セグメントで増益を確保したものの、国内外食、海外外食の2セグメントは依然赤字だった。

今2017年3月期の連結業績は、売上高1000億円、営業利益1億円と黒字化を計画、配当は5円を予定している。2015年4月~11月で売上高235億円、営業利益7.2億円を稼ぎ、収益柱の1つだった介護事業は連結対象から除外された。計画達成のためには、売上高483億円を稼ぎながら、営業損失15.3億円を計上した、主力の国内外食事業の復調が不可欠だ。

「たくさんのブランドを毀損してしまった」と清水社長が語るとおり、イメージ悪化が響き、国内外食の既存店売上高は前期に93.8%と大きく前年割れした。値引き販売の抑制、広告宣伝費の抑制などでコストを36億円削減したが、営業赤字からの脱出には至らなかった。72店を閉鎖したため、今期は減収になる見通し。利益改善のためには、既存店の回復が不可欠だ。

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