ワタミは外食事業の赤字を解消できるのか 介護事業の売却で財務は改善したが…

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改革の目玉は、「和民」「わたみん家」など、既存の居酒屋を専門性の高いブランドへ転換することだ。前期は実験的に10店強の店で転換を実施した。「売上高が転換前の8割になってしまった店舗もあった。家族向けの"わたみん家"もうまくいかなかった」(清水社長)と転換に失敗したブランドもあった。

好評だった9月開業の「ニッポンまぐろ漁業団」

ただ、「地産地消メニュー型」「ランチ&ディナー型」「料理特化型」など4つの業態はブランド転換前に比べ売上高を3割以上伸ばした。

たとえば、2015年9月開業の「ニッポンまぐろ漁業団」はまぐろ料理に特化した店。「ワタミ」ブランドだったときに比べて売上高が34.2%増加(開業から3カ月の平均値)した。2015年11月に「わたみん家」から、山陰地方の食材に特化した「備後町酒場 わたみんち」に転換した店は62.1%売上げが増加した。これらの転換店は2016年度に入っても好調を維持しているという。

全店の6分の1にあたる80店をリニューアル

今期は4.6億円を投じ、全店の約6分の1にあたる80店でブランド転換や改装を実施する。うち35店は実績をあげた4つの業態を増やしていく計画だ。残りの45店もブランド名や看板の掛けかえなどをおこない、店舗を改装する。

このほか、既存の主力業態「わたみん家」では、焼き鳥や飲料を低価格で提供するメニューに刷新する予定だという。清水社長は「ライバル会社に厳しい状況を突きつけられている。きちんとそこに張り合えるようにする」というが、低価格焼き鳥は「鳥貴族」が専門とする分野。ワタミと同業の総合居酒屋でも、コロワイドが手掛ける「焼き鳥センター」をはじめとして焼き鳥にブランド転換するチェーンが増えてきており、競争に打ち勝つのは容易ではない。

今期は、国内外食セグメント損益を15.3億円の赤字から均衡圏まで浮上させる計画だ。前期は大量に店舗を閉鎖した一方、出店は11にとどまった。会社側は、既存店の底上げで利益を大幅回復させるという青写真を描くが、ハードルは高い。

同社は、楽観的な業績予想を出す傾向がある。前期も、第3四半期まで4.9億円の営業赤字を計上しながら「コストカットでまだ捉えられる数字だと考えている」と、営業利益均衡圏の通期予想を変えなかった。

「グループイメージの刷新へ、グループメッセージやロゴ・カラーも見直す」と清水社長(撮影:風間仁一郎)

清水社長は「(成功している4業態以外にも)新たなブランドを考えている。ブランド名や看板の変更もいとわない」と語るが、前期も転換に失敗した店があったように、業態転換・改装がすべてうまくいく保証はない。

ブラック企業との批判を受けて悪化した企業イメージについても、5月16日の創業記念日を機に、「社名は変えないまでも、グループメッセージやロゴ・カラーを見直し、どんな会社になりたいか、もう一度考える機会にしたい」(清水社長)と語った。

介護売却や自己株式売却で当座の資金は確保したものの、国内外食事業の建て直しに見通しをつけるまでは危機を脱したとはいえない。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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