コメダ珈琲、高齢者を虜にする「もう1つの顔」 愛知県内のみで展開する「和風喫茶」の潜在力

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後日調べてみると、このデイサービスはレクリエーションのひとつとして「外出」を掲げており、その目的地のひとつとして「和風喫茶」を選んでいることがわかった。

筆者も父親がしばらくデイサービスに通っていたことがあり、施設を訪ねたこともある。同年代の友達が大勢いるとはいえ、毎日を同じ建物の中で過ごすのは退屈ではないか、という気持ちを抱いた。おかげ庵のような甘味喫茶にお出掛けできるのは、いい気分転換になるだろう。

さらに駐車場を観察すると、グループホームと記された軽自動車が止まっていることに気がついた。筆者の来店前から店内にいた車いすの高齢者は、このクルマで来店したのかもしれない。

おかげ庵は、もともと高齢者が多いこともあって、車いすに乗った客が訪れても、他の客が特別扱いするような雰囲気はない。こういうお店なら、車いすに乗った高齢者も、積極的に訪れようという気持ちになるだろう。

日本は世界一の長寿国であり、世界一の高齢国家でもある。こうした中で、おかげ庵とデイサービスやグループホームとのコラボレーションは、高齢者に喜びを与える好ましい取り組みではないだろうか。先進的な高齢者対応を行っている飲食店としてポジティブに評価したいし、「好ましき憩いの場」として発展していくことを期待したい。

「激動の10年間」の先をどう描く?

喫茶店の新しい価値をどこまでアピールできるか(撮影:尾形文繁)

コメダは1968年に第1号店を開店し、7年後に法人化した。その名前は、創業者の加藤太郎氏の実家が米屋だったことに由来する。2008年にはAP11(投資会社アドバンテッジパートナーズLLPがサービスを提供するファンドが出資)が経営権を取得。さらに、2013年に経営権がMBKP3に 移った。ただ、社名はコメダを引き継ぎ、2014年に持ち株会社コメダホールディングスが設立された。

振り返ってみれば、コメダは経営面では激動の10年間を歩んできたことになる。おかげ庵はその中で、決して大きくない火を絶やすことなく、2012年2月末の5店舗から現在7店舗に増えている。

現在は愛知県内に留まっているおかげ庵であるが、単なる和風喫茶としてだけでなく、デイサービスやグループホームからの受け入れを積極的に行う飲食店であることをさらに強調し、出店網を拡大していく手はあるだろう。出店先の地元にも喜ばれるし、安定した売り上げも見込めるはずだ。株式上場で潤沢な資金を調達することになるコメダが、おかげ庵をどう育てていくのかが楽しみだ。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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