イタリア銀行危機で「EU離脱ドミノ」始まるか 反EU派躍進、レンツィ政権は終幕に
今年1月に始まったEUの銀行再生破綻処理指令(BRRD)では、国民の血税を銀行救済に用いることへの批判や、「銀行危機」と「財政危機」の負の連鎖を断ち切る目的もあり、公的資金を注入する前に、銀行の株主や債券保有者などが銀行負債の8%相当の損失負担(ベイルイン)を求められる。
だが、イタリアの銀行債は機関投資家だけでなく、多くの個人投資家が保有している。銀行がリスクの大きさを十分に説明せずに、預金者などに銀行債の購入を勧誘していたとされる。昨年末にイタリアの地銀の破綻処理を行った際には、新たな破綻処理ルールの開始に先駆けてベイルイン原則を適用したところ、巨額の損失を被った年金生活者が自ら命を絶つ悲劇を招いた。個人投資家にベイルインを適用することは政治的に極めて困難な状況にある。
そのため、イタリア政府はEUに対して資本不足行への一時的な政府支援を認めるベイルイン規則の例外適用を求めているが、新指令の開始直後に特例を認めることにはドイツなどから反発の声が多く、協議が難航している。問題行の資本増強と不良債権処理の加速、さらには銀行部門の信頼回復に取り組む必要があるが、イタリア政府は八方ふさがりの状況に置かれている。
銀行処理で国民の怒りを買えば、解散総選挙へ
こうした銀行問題への対応の巧拙は、10月にイタリアで予定される憲法改正の国民投票の結果を左右する可能性がある。今回の国民投票はレンツィ政権の信任投票という意味合いを持ち、その結果は英国に次ぐEU離脱国が現れるか、つまり「離脱ドミノ」が実現してしまうのか否かを占う試金石ともなる。
憲法改正案は既に上下院を通過したものの絶対多数を確保できなかったため、国民投票に付されることとなった。改正案の内容は上院を地方議会の代表と位置づけ、定数を大幅に削減し(315→100)、立法権限を制限するもの。上下両院による立法権限がほぼ同等(法案成立には全く同じ法案を両院で可決する必要がある)のイタリアでは、選挙制度の違いもあり、しばしば両院で多数派が食い違う"ねじれ"が発生し、政権発足の難航や政権運営の停滞を招いてきた。これを修正しようという狙いがある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら