『ストロベリーナイト』に混ぜた「毒」 佐藤祐市監督に聞く(下)

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それはやはり、ドラマより現実の方が、訳が分からなくなっているからかもしれません。政治もそうだし、世の中に起こっている事件もそう。ドラマをやっていて、綺麗なところだけ上澄みをすくってみせるのは、見ている方から「現実感がない」と思われるようになってきている。

例えば「家政婦のミタ」で、ショッキングだったのは、(脚本家の)遊川和彦さんが「俺はお前たちのことを愛したい」、ということ。今までのドラマなら、親だから子どもを無条件に愛しているのは当たり前のことという前提があった。そうではないことが、ショッキングなんだけど、結局描いているのは家族愛。そういう意味では、テレビでも毒があるドラマが、どんどん増えてきていると思う。

現状維持ではダメだ

――佐藤監督は、『ストロベリーナイト』のようなミステリーだけでなく、これまでも『キサラギ』や『シムソンズ』など、バラエティー豊かな作品を手掛けられてきました。若いサラリーマン向けに、いろんなジャンルでベストを尽くすコツをアドバイスしていただけないでしょうか?

僕らの仕事でいえば、真摯にその作品に向き合う以外ないですね。何でも、やるからには仕事に対して愛情を持つこと。自信を持ってその仕事をやり遂げることが、大事だと思います。

最近でも、サンデル教授の「これからの『正義』の話をしよう」や、ドラッガーの「マネジメント」なんかがもてはやされましたが、それだけ混沌とした時代なのかなとも思います。大衆がそういう指針を求めているということですから。そんな混沌の時代だからこそ、アイデアを出して新しい仕事を生み出さないといけない。現状維持するためには少しだけ上向く方向に進めていかないと、現状維持すらできなくなる。

僕らも、いつも同じものをやっていればいいというわけではなく、ちょっとでも新しいもの、今の時代に新しいと感じるものにしていかないとやる意味がない。新しく作っていくことをしないと、絶対にまずいと思う。それはビジネスマンの方も一緒じゃないですかね。

(撮影:谷川 真紀子)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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