「メイカーズ革命」は全産業を変える 『MAKERS』著者のクリス・アンダーソン氏に聞く
電機業界は影響を受けやすいと言えるが、実際はすべての産業に変化を及ぼすだろう。多くの人は何か作りたいものがあって3Dプリンタを買っている。今や消費者が欲しいものを生産できる時代になったのだ。
つまり、消費者のニーズがあるのに製造されていない分野のものは何でもメイカーズ革命の恩恵を受ける。この世にはニーズがあるのに製品がない分野も多く、私はそれを「1万個市場」と呼んでいる。まさにロングテールの市場だ。こうした市場のいくつかは将来的に1000万個市場になるかもしれない。
その例の一つがYouTube(ユーチューブ)だ。素人が撮影した30秒程度の映像に誰も興味があるとは思っていなかったが、実際は爆発的なニーズがあった。つまり、市場は消費者のニーズに応じて、自然に形成されていくだろう。
――メイカーズの勝者になる条件はあるか。
趣味でメイカーズになる人が大半だろうが、中にはそれを公開し、コミュニティを作り、そこから次の段階を目指す人が出てくるかもしれない。こうしたミニ起業家の中から巨大会社が育つ可能性もある。未来の大企業がたった今、誰かのガレージで生まれているかもしれない。
起業した誰もが儲けられるわけではないが、私の会社は1万個市場の中で利益を上げている。1万個市場は大量生産するには小さすぎるため、手つかずのままだったが、顧客が1万人いれば十分に儲かるビジネスが作れる。今の状況は20年前のウェブ革命と同じで、今後新たな市場が膨らむことで製造者も消費者も恩恵を受けることになる。
ビットを無償提供、アトム有料販売のモデル
――ネットの世界ではフリー(無料)経済が中心だが、メイカーズ革命の結果、今後リアルの世界でもフリー化が広がるのか。
リアルな世界の「もの」は製造するのにコストがかかるため、無料になることはない。現状、リアルの世界ではたとえばハイテク製品は、プラスチックや鉄、半導体といったハードウエアと、スマートなソフトウエアからできている。ハイテク製品の価値のほとんどはソフト=情報の価値だ。つまり、安価なアトムと価値の高いビットからできている。
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