なぜ私は、新日本プロレスを買ったのか?

木谷高明・新日本プロレス会長を直撃(その1)

グローバルエリートの講評

今回お話を伺って感じたのは、新日本プロレス買収が今のところ極めていいディールだったという点だ。

5億円の買収価格は8億円の債務放棄や、潜在的な売り上げ成長の余地、およびブシロード社の本業との戦略シナジーを考えれば魅力的なバリュエーションだ。何よりもバランスシートに載っていない、新日本プロレスの築き上げてきたブランドバリューやコンテンツ価値を考えると5億円は魅力的なエントリー価格である。値段を聞いて、そんなんなら買いたかった、、と思っている方も多いのではあるまいか。

この値段は将来他のプロレス団体が身売りするときのベンチマークにもなるだけに、おそらく利益が出ていないであろう他のプロレス団体はいったいいくらで買えるのか想像を膨らませてしまう(もしプロレス団体のオーナーで、株を売ろうとされている方がいらっしゃれば、ぜひ私に相談してほしい。売却価格最大化のためにファイナンシャルアドバイスを提供させていただこう)。

 しかし、安いだけで投資はできず、価値を上昇させる余地がなければ安い会社のまま低空飛行を続けるのだが、今回の買収は珍しく(というのもM&Aの大半は失敗するため)戦略的シナジーが大きかった。

実際、本業のカードゲームでプロレスコンテンツが買収後一年目にして、早くも3億円もの売り上げに迫るという。株主であるブシロードのみならず中で働くレスラーや社員、また顧客であるファンからの反応も上々で、今のところブシロードによる新日本プロレス買収は、投資後のバリューアップも含めて成功裏に進んでいる。

ブシロード自体が非常にキャッシュリッチな会社で、新日本プロレスに利益が出ていない中でアグレッシブなマーケティングを打てるようになったのも大きいが、お金だけでなく経営への規律も効いている。

たとえば以前もキャッシュリッチな異業種の会社によるプロレス界への参入はあった。20年ほど前にメガネスーパーがレスラーを老舗団体から引き抜き多額の資金を投じて新団体を設立したが、まだプロレス人気が強い時代だったにもかかわらず結局失敗に終わっている。そもそも眼鏡屋さんがプロレス団体に投資するという戦略的シナジーが全然ないディールだったわけだが、結果的に放漫な経営体制が祟って、メガネスーパーは大借金を抱えてプライベートエクイティファンドに身売りする羽目に陥ってしまった。

金と経営センスと業界への愛情を抱いている人が来たのは業界にとって幸運だったと言えよう。ちょっと褒めすぎてしまったかもしれないが、次回以降、木谷氏のプロレス業界復活に向けた戦略についてより踏み込んで分析していきたいと思う。

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