EU離脱を覆す「まさかの再国民投票」の現実味

今は英国の事業を拙速に動かしてはならない

EU加盟国に対しては、リスボン条約(EU reform treaty)が適用されるため、EUから離脱したい加盟国は、リスボン条約第50条に基づいて、離脱の意思を欧州理事会に通知しなければならない。しかし、離脱の通知時期については、何も書かれていない。つまり、今回の場合はイギリスにタイミングを図る権利が与えられている状態だ。一方、通知があれば、そこから2年間の協議期間を経て正式にEUから離脱することになるが、もしこの期間中に協議がまとまらないと、イギリスへのEU法の適用は自動的に停止される。

例外的に期限を延長することもできるが、そのためには欧州理事会における全加盟国の合意が必要になる。1カ国でも反対すれば、イギリスはEUから自動的に退出させられることになるのだ。みずほ総合研究所上席主任エコノミストの吉田健一郎氏は「交渉を始めるかどうかというボールは、現時点ではイギリスの側にあるが、一度始めてしまえば途中で交渉をやめるという選択肢をイギリスは持っていない。通告をできるだけ先延ばしにした方がいいことは明らか」と話す。

リスボン条約50条には、脱退を望む加盟国の「憲法上の要件に従って」離脱通知を行うとされているが、イギリスには明文の憲法が存在しない。そのため、もし通知をするのであれば、下院での決議が必要ではないかということになる。しかし、EU残留派が数的優位を保っている以上、離脱の通知を粛々と行うかは不透明だ。

首相に解散権限はない

国民投票による民意との「ねじれ」を解消するために、下院を解散するという選択肢はある。しかし、イギリスには2011年議会任期固定法という法律が存在し、日本と異なり首相に解散権限はない。例外的に議会が早期解散できる要件は、内閣不信任案が可決された後、新内閣の信任決議案が可決されずに14日が経過した場合、及び下院の議員定数の3分の2以上の賛成で早期総選挙の動議が可決されたときに限られている。任期途中の解散総選挙のハードルはかなり高い。

また、もし解散したとしても、これが今回のEU離脱について民意を反映するものになるかは疑問だと、乗越弁護士は語る。

「残留・離脱をめぐって与党の保守党が割れていて、保守党の主流派と労働党が残留という立場で一致してしまっている。イギリスの選挙は伝統的に党で投票を決める傾向があるが、この状況では有権者は誰に入れれば離脱・残留の意思を示せるのか不明だ」

国民投票の結果の是非だけを公約にして選挙を行うということも論理的にはあるかもしれないが、総選挙をシングルイシューで行うことは考えにくいのではないか。そうすると、もう一つの手段である再度の国民投票が現実味を帯びてくる、というわけである。

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