――同じ話を、映画、小説と違う媒体で表現することで見えたことはありましたか。
苦労も多かったですけど、面白かったですね。だって自分の若い頃を知念君が演じるわけですから。ここが小説とも舞台とも違うところですね。ふたり一役で。25歳くらいまでを知念君が演じて。そこから現在までを俺が演じる――。不思議な感じですが、そこが映画の醍醐味でしょうね。舞台はゼロ歳から中学、高校、現在まで全部わたしが演じました。小説は、一貫した秋田泉一を思い浮かべられるわけだし、それぞれの分野で表現の仕方が違うと改めて思いましたね。
同世代の人たちはみんな摂生している
――映画の編集が終わった頃かと思いますが、映画版の見どころは?
自分のカラーが色濃くでている映画に仕上がったなというのが監督としての実感です。どんなジャンルと聞かれたら、答えにくい。コメディーですが、なんか変わった、賑やかな映画になりました。展開も早くて、とにかく賑やかですね。いろんな登場人物が現れては去っていくし。その中で感じ取ってくれるものがあればいい。もちろん笑ってもらうのが一番ですけどね。
――小説版ではそんな勢いが反映されているように思えました。
勢いだけで書きました。なんせこの金メダル男を書くのは3回目ですから(笑)。
――内村さん版の『フォレストガンプ』のようにも読めましたが。
そう言ってもらえるとありがたいですね。ここのエピソードは共感したなとか、ここのエピソードは自分に通じるものがあるなとか、小説でも映画でもそういう感じで思ってもらえたらいいですね。
――小説版では温水洋一さん、薬師丸ひろ子さん、阿部寛さんなど、同年代の方について言及するくだりがありました。接点のあるなしは別にして、そういった同世代の方に親近感があったりするのでしょうか。
同世代の人たちはみんな摂生してらっしゃるなとは思いますね。B'zの稲葉さんとかもそうですし、阿部さんも『テルマエ・ロマエ』の時はものすごくいい体を披露していたじゃないですか。同い年なのにすごいなと思ったし。そうすると、自分もやっぱり摂生しないと、と思ったし。そうかと思えば、出川(哲朗)君のような不摂生な人もいますけど(笑)。いろんな64年生まれがいますよね。堤真一さんとか、近藤真彦さんとか、カッコいい人も多いので、自分も頑張ろうという刺激になりますね。
――映画の専門学校で南原さんと出会い、お笑いの道に進むようになったわけですが。もともとは映画志望だと聞いています。
もちろんです。上京した時は、まさか自分がお笑いをやるなんて思いもしませんでした。レクリエーションで、ドリフのコントのまねをしたりして、お笑いは好きでしたが、その職につくなんて考えもしなかった。小説にも書きましたけど、人生は不思議だなと。先のことは本当に分からないというのが本音です。
――それでも結果的には映画監督という道に戻ってきたのが面白いなと。
ありがたいことですね。やはりお笑いを頑張ってきたから、映画という巡り合わせがやってきたと思う。そしてお笑い自体もすごく好きになっていった。いい職につけて、自分は本当に恵まれています。
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