安倍首相は先日のG7では各国首脳に対して、「世界経済はリーマン・ショック並みの危機に備える必要がある」と訴え、G7終了直後には消費増税を見送るという決断をしました。海外メディアの多くは「消費増税を延期するために、リーマン並みの危機を煽った」と批判的な見方を示しましたが、日本経済の実態を冷静に見ていると、安倍首相の認識はある意味では正しいのかもしれないと思われます。日本国民の生活水準の落ち込みを考えれば、確かに家計部門はリーマン・ショック時と同じような状況にあるからです。
繰り返しになりますが、2013年~2015年の実質賃金の下落率は累計して4.6ポイントにまでなっており、この下落率はリーマン・ショック期に匹敵しています。また、2015年の途中までは下落率が5.0ポイントを超えていて、明らかにリーマン・ショック期を凌駕していた時期もあったのです。
個人消費は戦後最悪の減少率を記録
国民の購買力がリーマン・ショック期と同様に落ち込んでいるというのに、GDPの6割を占める個人消費が増えるわけがありません。1990年代に日本のバブルが崩壊して以降、個人消費がマイナスになったのは、金融システム危機で金融収縮が起きた1998年、リーマン・ショック期の2008年~2009年、そして実質賃金が大幅に下落した2014年~2015年の計5年間です(意外かもしれませんが、消費増税を行った1997年には個人消費は増えていたのです)。
ここで注目しなければならないのは、個人消費が2年連続でマイナスになったのは、2008年~2009年と2014年~2015年の2回しかないということ、さらには個人消費が2008年に0.9%減、2009年に0.7%減だったのに対して、2014年は0.9%減、2015年は1.3%減と、戦後最悪の減少率を更新してしまったということです。このような現状を見れば、大手メディアの世論調査で押しなべて「8割が景気回復を実感していない」という結果が出るのは、当然のことであると言えるでしょう。
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