円安に頼る経済政策を終わりにする時が来た

円高で実質賃金と個人消費は増加に転じる

日本記者クラブでの党首討論。有効求人倍率を取り上げる安倍首相に対して、反論できない野党党首たち。経済政策の深い議論は望めないままだ(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

今回の参議院選挙において、安倍首相がアベノミクスの成果として必ず訴えているのは、主に、①有効求人倍率が24年ぶりの高水準であるということ、②民主党政権時に比べて税収が21兆円増えたということ、の2点になります。

これら2つの成果だけを強調されると、国民のなかにはアベノミクスを評価する人々がいるでしょうし、実際に各種の世論調査などでも、およそ半数近くがアベノミクスを評価すると答えています。しかし、これら2つの成果が、自らにとって都合のよい数字だけを並べていて、もっと大事な数字が隠されていると言ったら、みなさんは信じることができるでしょうか。

まずは①の有効求人倍率については、2015年3月2日の『アベノミクスで失業率は低下していない』2016年3月27日の『政治家の皆さん、もっと経済を勉強しなさい』と2年連続で述べさせていただいたように、アベノミクスによって有効求人倍率が上昇したわけでは決してありません。このようなデタラメな主張ができるのは、日本経済や日本社会の基本的な構造変化を無視しているからにほかならないのです。

有効求人倍率が上昇する本当の理由

この連載の記事はこちら

日本の総人口は2008年の1億2808万人をピークに少しずつ減少していますが、2013年に21.7万人減(0.17%減)、2014年に21.5万人減(0.17%減)、2015年に27万人減(0.21%減)となり1億2711万人まで減少しています(いずれも10月1日現在)。

これに対して、生産年齢人口(15~64歳)は2013年に117万人減(1.5%減)、2014年に116万人減(1.5%減)、2015年に77万人減(1.0%減)と総人口と比べても減少率が大きく、7708万人にまで減少しています。これは、2012年から2014年の3年間に団塊世代が65歳に達するようになり、その減少数が大幅に拡大していたためです。

安倍政権誕生前の2010年~2012年の3年間で、生産年齢人口は132万人減少していたのに対して、誕生後の2013年~2015年の3年間では、実に310万人と2倍超も減少していたというのですから、人手不足になるのは当然のことであったと言えるでしょう。生産年齢人口の急激な減少を背景に、2012年以降は失業率が徐々に低下し、有効求人倍率が上昇するのは、初めからわかっていたというわけです。

次ページ税収増は素直に評価できない
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 世相をリアルに映し出す 流転タクシー
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 最新の週刊東洋経済
  • コロナ後を生き抜く
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
面接や説明会で採用者が嫌う「9つのNG質問」
面接や説明会で採用者が嫌う「9つのNG質問」
会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件
会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
生前贈与がダメになる<br>相続の新常識

相続をめぐる環境が激変しています。年110万円まで非課税だった生前贈与が税制改正により認められなくなる可能性も。本特集では相続の基本から、よくあるトラブルと解消法、最新路線価に基づく相続税額、さらに生前贈与の将来動向まで取り上げました。

東洋経済education×ICT