ユニクロはなぜ中国人に愛されるのか? 中国で「日本発」を売りにしてはいけない(上)

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このように、日本が出資しているというだけでやり玉に挙げられるわけですから、日本を前面に出していくのは当然リスクがあります。

これからの日本企業は、中国で日本を売りにすることはできません。少なくとも、振り返って「日本発」しか売りがないような実のない日本ブランドなら、参入すべきではない。日本製だから単純に売れるという時代ではないし、また、日本の存在が世界で希薄化していくことは企業レベルでは受け入れざるをえない確実な将来であるわけですから、そういう時代に勝てるブランド・商品づくりをしなくてはいけないと思います。

日本ブランドではなく、実質的な価値で真っ向から勝負すればいい。日本における韓国製の商品について考えてみてください。サムスンのGalaxyや韓流ドラマは、韓国発だから、韓国ブランドだから、売れたのでしょうか? 日本の消費者は、その実質的な価値を認めたから受け入れたはずです。

日本ブランドが世界に通用しなくなった今、日本企業は何が自分たちの持っている本当の強みなのかを見つめ直すいい機会だと思います。

ユニクロがトップ30ブランドに選ばれた理由

では、どんな「What」で勝負するか?

中国において、実質的な価値が認められているブランドとして、ユニクロを紹介したいと思います。ここで使用するデータは、中国の『第一財経週刊』という経済誌、日本でいうと、『週刊東洋経済』や『日経ビジネス』のような雑誌が毎年実施しているブランド認知調査です。

ここの調査手法はある意味思い切ったもので、サンプルを都市部の22~30歳のホワイトカラー3000人に絞って、ブランドへの反応を調査しています。このようなやや強引な手法にもかかわらず、この対象セグメントは正に中国の消費者の中で最も有力なリーダー層であるため、この調査は中国市場で先進的地位を築いたブランドを、最も良く浮き立たせる調査とも言われています。

その中でも、編集部が全カテゴリーをまとめて中国トップ30のブランドを選ぶのですが、今年は一社のみ、日系企業がランク・インしました。それが、ソニーでもパナソニックでもトヨタでも資生堂でもなく、「ユニクロ(中国名・优衣庫)」なのです。

中国(台湾・香港の各1ブランド含む)地域以外発祥のブランドでこのリストに載っているのはわずか12社、アジアではわずかにユニクロ1社だけです。海外勢11社というのもコカコーラ、Apple、スタバにマクドナルドといった誰が見てもグローバルブランドといったところばかりで、サムスンも選ばれなかったわけですから、この結果にどれほどの価値があるかがわかります。また、アパレル業界でみてもユニクロはZARAやH&Mを抑えて初の1位となりました。

中国では今、都市化の大きなうねりが起こっており、地下鉄や都市環状道路などの建設とともにショッピングモールが数多く建設されています。私もそのお手伝いをしていますが、ショッピングモール側は「とりあえず、ユニクロ、ZARA、H&Mの店舗は入れないとね」と言います。これらのブランドの国籍がもはやどこなのかを全然意識していません。

中国のローカルブランドと同じように愛され、生活の中に自然に組み込まれてしまえば、日本製かどうかなどはまったく関係なくなってしまう。そういう領域をこれからの日本企業は目指すべきです。その領域にすでに達しているブランドのひとつがユニクロなのです。

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