「スイミング」武器にルネサンスがベトナムへ 現地最大手と合弁設立へ

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一方、ベトナムでは小学校などでの水泳指導はあまり行われておらず、フィットネスクラブのプールでも水泳指導のコーチが完備されているケースはないという。ルネサンスは日本ならでの水泳指導のノウハウを持っているうえ、上場企業(東証1部上場)という信頼感もある。BANG LINH社がルネサンスとの合弁会社設立を決めた背景には、そうしたこともあったようだ。

泳法指導と水質管理のコンサルからスタート

合弁会社設立後は、ルネサンスはまず、BANG LINH社の運営する既存施設で泳法指導などを含めたコンサルティングを行うと同時に、プール施設の水質管理などについてもコンサルティングを行っていく。将来的には、業務受託などによる施設の運営や、直営施設の展開もありえそうだ。

ルネサンスは日本国内でのフィットネス市場が成熟化していることを受け、ベトナムをはじめ、タイ、シンガポールなどアジア諸国で現地のフィットネスクラブ視察などを含めた市場調査を進めてきた。その過程でベトナム市場ではBANG LINH社に協力を仰いだことをきっかけに人的なつながりを深め、今回の合弁会社設立申請に至ったという。

ベトナムは年率8%前後の高い経済成長率が続くうえ、「ひとりっ子政策」による少子高齢化が進む中国などとは違い、人口構成に占める若年層のウエイトが高く、フィットネス市場の高成長が期待できる。また、ASEANの中でも先進国のシンガポールには欧米系のフィットネスクラブの進出が目立つが、ベトナムでは独資での事業展開がまだ難しいこともあり、海外からの進出はこれから。ルネサンスはそこに、同社にとっても初めてとなる海外進出の勝機を見出したようだ。

日本のフィットネスクラブ大手の海外進出としては、業界2位のセントラルスポーツが米国のスポーツクラブに出資し、クラブ運営に参画しているのが目立つ程度。アジア地域への進出はあまり例を見ないという。日本ならではのスイミング指導の神通力がどこまで通用するか。ルネサンスのベトナム進出の成否もそこにありそうだ。

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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