「07年の悪夢」の再現もあり得る安倍首相 ニュー自民党への脱皮はなるか?

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3年4ヵ月ぶりの自民党政権、5年3ヵ月ぶりの安倍内閣の発足である。

組閣人事は「挙党態勢・実力者内閣」、「チーム安倍」で固めた「直系配置内閣」だが、裏返せば、派閥取り込み、実力者依存、論功行賞による側近多用を強いられたと見ることもできる。総選挙大勝にもかかわらず、安倍首相の政権基盤が必ずしも堅固でないことを示している。

安倍首相の第一の目標は来夏の参院選の乗り切りだ。

第1次内閣時代の参院選敗北、直後の退陣という「2007年の悪夢」の二の舞いを避けるのが最重要課題だろう。その壁を通過すれば、15年の自民党総裁任期満了までの2年8ヵ月余の在任の展望が開けてくる。

安倍路線は参院選後まで封印か

参院選の乗り切りには、そこまでの国会運営、党内統治、それに国民の支持が条件となる。事実上の「脱ねじれ」で国会はほぼ無風、「権力は接着剤」という体質の自民党では内紛も当面はなさそうだ。

課題は国民の支持である。そのために、経済政策を除き、持論の憲法改正、対中・対韓などの国益外交などの「安倍路線」は、参院選後まで封印するつもりではないか。

一方、国民の要望が強いのに、民主党政権で優先順位が高くなかった経済再生と脱デフレに取り組めば、国民の支持も高くなると計算しているのだろう。

安倍首相は、経済政策も含め、「民主党政権との差異」を際立たせる作戦だ。だが、国民はそれ以上に「09年の野党転落までの自民党と政権復帰した自民党との差異」「07年に無様な辞め方をした安倍首相と再登板した安倍首相の差異」に目を凝らしている。

ところが、首相自身は民主党政権誕生に道を開いたことへの自責の念とリベンジ、06~07年の「未完の安倍政治」の完遂が念頭にある。前回の失政に対する反省、「ニュー自民党」への脱皮という意識は乏しい。

09年以前の自民党政権との連続性、自民党政治の再現に力点があるようだ。「懲りない自民党」に、国民はどんな反応を示すのか。甘く見ると、支持離れ、参院選敗北、早期退陣という「07年の悪夢」の再現もないわけではない。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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