似た者同士の「勝負どころ」 塩田潮の政治Live!

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年明けに時事通信社主催の新年互礼パーティーで首相の顔を肉眼で見ることにしている。今年も7日夜、会場に出向いた。

 1年交代の首相が続いているので、同じ首相の色艶や顔つきを前年と見比べる楽しみは望めないが、安倍首相は6年ぶり2度目の登場である。

 2008年9月の健康悪化による首相退陣劇の残像が消えていないこともあり、私も含めて日頃、首相を直接、目にする機会がない一般の人たちは、何よりも健康と体調に関心を抱いたはずだ。安倍首相自身、そこを意識したのか、スピーチで正月休みの間のゴルフの話を持ち出し、好成績を自慢した。体力十分をアピールして、5年前のマイナスイメージを消したいのかな、と勘繰った人もいたに違いない。

 本当のところ、長年の持病は克服できたのか、政権運営などで極度のストレスに見舞われたり窮地に陥ったとき、08年9月の再現とならないのかどうかが気にかかるが、その点はいまや「最高級の国家機密」だろう。

 

失敗からどれだけ学べるか

安倍首相に続いて、初登場の海江田民主党代表が登壇した。長身、童顔、柔らかな物腰は安倍首相と共通項で、与野党のトップが似た者同士という時代を迎えたことになる。

 安倍首相は持論の改憲論や国益外交を一時、封印して、「アベノミクス」で経済再生を狙い、「経済宰相」を目指す構えだが、海江田代表も政治家の前は「経済評論家」で、その分野ではプロという自負があるはずだ。それだけでなく、二人には「べそをかいて政権を投げ出した首相」と「泣き顔に涙目で失笑を買った経産相」という類似点もある。

 過去のつまずきや醜態をあげつらう気はない。それより、二人とも、自身の弱点だけでなく、政権党が野党転落に至った原因、党の路線や政策、構造や体質も含め、過去の「失敗」からどれだけの教訓を学び取り、政治リーダーとして変身・脱皮を遂げたかだ。イケメン、ソフトムード、スマイルだけでは早晩、べそと涙目の二の舞いを演じかねない。一見、似た者同士だが、この先、苦境・逆境に遭遇したときの乗り切り方が勝負所だろう。

 

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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