産業発展フェーズによって駐在員教育は変わる

グローバル人事の「目」(第9回)

日本の大手商社のA社は異文化学習のプログラムを3段構成にしている。1段、2段は他社と同じような異文化対応と派遣先の国の文化の基礎の学習である。3段階目に派遣先の国の文化と産業発展フェーズを絡めた研修を実施している。

ケーススタディを基に現地を理解

たとえば中国に派遣される場合は、「国の情勢により法律もコロコロ変わる。経済は伸びているが、企業は雇用を保証してくれない。いつ状況が変わるかわからないので、稼げるときになるべく多く稼ぎたい」等、今置かれている中国人の状況を理解させる。そのうえで、「あなたは20年経理畑を歩み経理部長をしている。しかし、来月から人事部長をしてほしいという打診があった。あなたならどうするか?」と、まさに日本企業の中国現地法人で起きそうなケースについて質問するのだ。

すると勤続年数が長い典型的な日本人であっても「その状況なら異動はNOですね。国や会社が職を保証してくれるわけではないし、結果を出さないと最悪クビか、キャリアに傷がつくことになりかねない」と言う。そして「そうか、現地法人の中国人はこのように考えるのが普通なのだな」と、中国人と日本人とで異なる行動様式を実感させるのである。

このようなケーススタディを複数実施し、そのうえで駐在先での異文化対応について考えさせている。I社ではの3段階目のワークショプを行うことにより、中国現地法人の駐在員と現地社員との距離感が縮まり、組織力が向上したというアンケート結果も出てきている。

また、日本企業が高度成長期に実施していた昼飯を社員が集まって取る、家族を交えた運動会等の社員行事などへの取り組みが、お互いの価値観の理解・すり合わせや組織力向上の一翼を担っているという。

このように「産業発展のフェーズ」を考慮する施策を取り入れれば、悩み深い異文化対応力の壁を乗り越える一助となるため、日本企業の駐在員教育にぜひ取り入れていただきたいと筆者は願っている。

(撮影:吉野 純治)

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