産業発展フェーズによって駐在員教育は変わる

グローバル人事の「目」(第9回)

これを裏付ける調査があるので紹介しよう。ミシガン大学の政治学者であるロナルド・イングルハートが2005年に実施した世界価値観調査がある。この調査結果によると、人の価値観は経済構造によって規定されるという。社会が工業からサービス業に移っていくごとに、「生存価値」から「自己表現価値」に価値観が変わっていく等、人の価値観は産業発展のフェーズによって変わっていくことを示している(出典:『経済倫理=あなたは、なに主義?』橋本努(講談社選書メチエ))。

中国の本来の文化や価値観に産業発展フェーズが与える影響を考えてみよう。中国は本来、家族や仲間を大事にするといった集団主義を重んじてはいるが、現在の中国は「工業が発展したが、まだサービス業化されていない段階」にあるため、「世俗合理的」かつ「生存価値≒おカネ」という状態にあると考えられる。

ではどのように産業発展のフェーズがその国の文化や価値観に与える影響を読み解くのか。それは戦後の日本がたどってきた軌跡を思い出してみるとわかりやすい。

異文化対応力を点から線にとらえ直す

日本は戦後の物がない時代から復興、高度成長、バブル等、産業発展の影響を強く受け、価値観や行動も変わってきた。海外の人が日本の文化を知るのに「日本人=サムライ、フジヤマ、キョウト」等だけでは足りないことは容易に察しがつくであろう。

しかし日本企業が実施している異文化対応力の学習は、「日本人=サムライ、フジヤマ、キョウト」等と同様の観点で、その国の文化・価値観を教えることにとどまるケースが大半である。日本をはじめ先進国がたどってきた産業発展と国民の意識・行動の変化を読み解けば、今中国が産業発展のどのフェーズにいるから、こんな価値観・行動を取るのではないか、さらに発展するとどう変わるかという仮説が立てられるようになるのである。

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