求人情報と違う労働条件が横行し続ける理由 根本的な問題はあまり変わらない
それでも求人票と実際の労働条件が異なる場合、求人票を見てその会社に就職しようと思った労働者は「だまされた」と感じるのも無理もない。通常の契約(たとえばアパートやマンションの賃貸契約など)の場合であれば広告記載の契約条件と実際に契約する場合の契約条件に齟齬があった場合、「嫌なら契約しない」「別の物件を探す」という判断を行うことは比較的容易だが労働契約の場合はそういうわけにはいかない。
ただでさえ就職難と言われている昨今、正社員として採用されるだけでも狭き門であり、多くの労働者は、採用選考で選ばれて採用された以上、その会社に就職するしか現実的な選択肢はなく求人票と労働条件に齟齬があるからといって就職を辞退するわけにはいかない。とりわけ新卒で入社をめざす大学生の場合は、新卒の4月に入社が果たせなければせっかくの新卒入社の機会を棒に振ってしまいかねないことから、実際の労働条件が求人時と違っても受け入れなければならないケースもある。
求人を見て応募を決めたとはいえ、実際に労働契約を締結する段階で労働条件を確認できれば、求人と実際の内容に齟齬があっても仕方がないと考える人もいるかもしれないが現実には、そういうわけにはいかない場合がほとんどなのである。
求人に関して法律はどうなっているのか。職業安定法という法律では、求人企業に対して業務の内容、賃金、労働時間その他の労働条件の明示を義務づけている(職業安定法5条の3第2項)。
また、職業安定法は、虚偽の広告、虚偽の条件を提示して労働者の募集を行った場合の罰則も定めている(職業安定法65条8号)。以下に引用しよう。
(略)
八 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
(略)
しかし、この規定によって実際に罰則が適用された例はないという。
今回、厚生労働省が罰則を強化する理由も現行法の罰則の実効性の低さにあると思われる。
求人広告の労働条件の内容が異なった場合
それでは、求人票の労働条件と実際の労働条件が異なっていた場合どうすればいいのか。
1つは、求人票記載の労働条件が労働契約の内容になっているとして、会社に対して求人票記載のとおりの労働条件で働くことを認めさせるという考え方である。これにより、たとえば給料の額が異なっていた場合は、差額の賃金を請求できることになる。
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