消費増税の先送りは正しい判断だったのか 2025年以降の社会保障費急増に無策のまま

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このような消費税率引き上げのスケジュールが具体的にはどのようなものなのかを示したのが図だ。当初の計画では消費税率は毎年度1%ポイントずつ引き上げていくペースで2025年度に20%に達した。2014年11月に延期の決定をしたことによって、必要となる引き上げの速度は2017年度以降毎年度1.25%ポイントのペースになった。

さらに、今回10%への引き上げの時期を2019年10月とすることで、2021年度から毎年2%ポイント程度のペースで消費税率を引き上げなくてはならなくなっており、消費税率引き上げのスケジュールはよりタイトなものになる。

増税なくして財政再建なし、ツケがたまるだけ

10%への引き上げ時期が当初の予定より遅くなったことで、はるかに速いスピードで税率を引き上げていかなくてはならなくなった。消費税率を引き上げた際の経済へのマイナスの影響は大きくなり、増税によって経済が大きく落ち込んでしまうリスクは大きくなってしまう。また、スケジュールがタイトなので、今回のように経済情勢を判断して引き上げ時期を遅らせるという余裕もなくなる。

政府は日本再興戦略2016で名目GDP600兆円を目指しているが、この目標を達成しても増税なしに財政再建を達成することは無理だ。世界経済が落ち込むリスクがあることは否定できないが、日本だけの力で世界経済のコースを変えることは難しい。増税時期を延期した2019年10月に、日本経済の状況は今よりも改善していても、海外経済の混乱が深刻になっているという可能性もある。

さて、医療の世界では、主治医以外の医師のセカンドオピニオンを得ることが、よりよい治療法の選択に役立つことがあるとされている。読者のみなさんにも、是非、「増税は延期すべき」という意見の理由を詳しく調べることをお勧めしたい。筆者なら幸運に賭けるよりも、今は苦しくとも着実な方法を選ぶが、読者のみなさんはどのようにお考えになるだろうか。

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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