消費増税の先送りは正しい判断だったのか 2025年以降の社会保障費急増に無策のまま

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消費税率の引き上げを延期したことで、将来の増税のスケジュールはどうなるだろうか。

日本の高齢化率は既に世界最高水準にあるが、将来、他の先進諸国よりもはるかに高い水準に達すると予想されている。社会保障を欧州よりもよほど低い水準に引き下げない限り、費用を賄うために欧州以上の負担が必要になるので、日本は消費税率を欧州よりも高い水準にまで引き上げなくてはならないはずだ。

第二次世界大戦直後の1947年からの3年間に生まれた団塊世代は、2025年には75歳を超えて後期高齢者となる。このため、このころになると日本では社会保障費の支出が急増すると予測されている。

医療費を例にとって説明すると、一人当たり医療費は75歳頃から急速に増加するので、後期高齢者が増加すれば日本の医療費は大きく膨張するはずだ。また、介護費用を考えても、後期高齢者になれば介護の必要なケースも増えるので、この費用も膨張するはずだ。

年金の水準を引き下げて年金関係支出の膨張を抑制することは可能だが、医療や介護では急膨張を抑えることは簡単ではない。

先送りによって将来の増税は急ピッチに

公的な介護や医療の水準を引き下げれば若い世代の負担軽減になるように見えるが、例えば老親が介護状態となったときに、子供の家族が私的に大きな負担を行うことが必要になるので、全体としてみれば問題の解決にはならない。

社会保障費の大幅増加をまかなう歳入を確保する必要があり、欧米諸国をはるかに上回る高齢化率になることを考えれば、相当楽観的に考えても2025年までには消費税率を少なくとも現在の欧州各国並みの20%には引き上げておかなくてはならないだろう。

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