消費増税の先送りは正しい判断だったのか

2025年以降の社会保障費急増に無策のまま

消費税率の引き上げを延期するのではなく、凍結すべきだったという意見もある。消費税率引き上げがあると分かれば、その時点で将来生活水準を下げなくてはならないと考えて、増税のはるか前から消費を切り詰める人もいるだろう。延期では消費税率が上がる時期が変わるだけなので、凍結によって消費税率引き上げがまったく視野に入らないという場合に比べれば、消費者が増税に備えるので消費水準がいくらか低いという可能性はある。

しかし、そこまで先のことを考える人は少ないようで、過去にははっきりとした影響があったとは見られない。また、消費税率の引き上げ凍結を宣言したところで、日本の人口高齢化が止まるわけではないから、高齢化の進展による社会保障費の増加に対応するために、どこかで増税しなくは乗り切れないということは変わらない。消費者が正確に状況を理解していれば、政府が消費税率を引き上げるのを延期しようが凍結しようが、タイミングがずれるだけでどこかで増税は不可避だと考えるはずで、当面の消費に与える影響はそれほど大きくないと考えられるのだ。

日本の社会保障費は2025年ごろから急増

従って、2017年度からの消費税率引き上げが延期されたことによって、将来の増税を見込んだ消費の減少はなくなるはずだが、その影響は小さい。2016年度については、増税前の駆け込み需要がなくなる効果のほうが大きく、むしろ実質GDP(国内総生産)は小さくなる。2017年度については、増税前の駆け込み需要の反動による消費減が起こらないし、実際に増税が行われたことによる実質所得の減少も起こらないので、実質GDPは大きくなる。

日本経済研究センターは、経済見通しを作成している民間エコノミスト約40名を対象に毎月「ESPフォーキャスト調査」を行っている。これによれば、増税延期決定前の5月調査では実質経済成長率の見通しは、2016年度0.9%、2017年度は0.0%だったが、増税延期表明後の6月調査では、2016年度は0.7%に低下した一方で、2017年度は0.9%へと大きく高まっている。経済成長率の予測が変わったのは、消費税率の引き上げ延期だけが原因ではないが、最も大きな要素であることは疑いない。

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