フロリダ惨劇は大統領選に巨大影響を与える

トランプが勢いづくキッカケになりかねない

第1に、クリントンも事件発生後声明を発表しており、こちらはきわめて正当派といえる主張だ。イスラム教徒やイスラム教には言及せず、テロ攻撃として事件を取り上げ、これを予防するには各国と協力し、国際テロ組織を撲滅することが必要だと訴えた。

また、クリントンは今回のテロに使用されたアサルトライフルを規制する必要性や、今回の事件で多くが犠牲となった性的少数者の人権を重視し、「我々はあなた方が自由で、恐れることなく生活できる権利のために戦い続ける」と擁護する姿勢を示した。

クリントンは、テロ対策、銃規制、少数者保護などこれまでの予備選でも争点となってきたことについて、あらためてリベラルな主張を展開したのだが、それは、きわめて教科書的な正論だ。ナショナリスティックな感情に訴えるトランプに比べるとパンチに欠けており、結果的にクリントンの正論がトランプの過激な発言を引き立てる結果になったといえる。

しかもクリントンはシリア難民6万5000人の米国定住を支持している。難民の受け入れは欧州諸国が困りはてている問題だ。トランプにとっては格好の攻撃材料となり、「クリントンは中東からの入国を劇的に増やそうとしている」と批判し、「クリントンは大統領選から撤退すべきだ」とも述べた。

クリントンがトランプを引き立てる結果に

かくして、今回の事件はトランプとクリントンの違いを劇的に際立たせた。結果的に、強い口調でアメリカを守るトランプの立場は有利になったと思われる。しかし、テロ対策、銃規制、少数者保護などの諸問題に関するクリントンの主張は厳しい議論を経てきたものであり、筋金入りだ。地味であっても米国民が冷静になればなるほど賛同するだろう。

米国のある評論家が、「50人も死んでいるのに、トランプはおめでとうの賛辞に浸っている」というのは、今回の事件でトランプが有利になっただけで済むものでないことを言いえて妙だ。

第2に、今回の事件と過激派組織ISとの関係だ。オバマ米大統領は13日、銃撃犯がISとつながっていたと示す明確な証拠はないと述べたが、IS自身は犯行声明を出している。

今回に限らず、テロ事件が起こるとISは犯行声明を発出する傾向がある。昨年12月、米カリフォルニア州サンバーナーディーノで起こった銃乱射事件の際も同様であった。ISとしては、その勢力が強大であることを誇りたいのだろう。

しかるに、トランプがイスラムを問題視すればするほど、ISにテロ攻撃の口実を与えることになる。つまり、トランプの過激発言は、本人の意図とは正反対に、テロを助長することになる危険がある。

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