NATOは、プーチン大統領をどう苛立たせたか ロシアへの軍事的圧力を一気に強化している

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オバマ大統領が2009年に就任した当初は、ブッシュ前政権時に築かれた破滅的な外交政策のがれきから、自らを掘り出さなければならなかった。オバマ大統領は、ロシアとの関係を「リセット」すると宣言。米ロ対立の火種となっていた東欧におけるミサイル防衛計画の凍結を発表した。

最終的には、東欧同盟諸国が関与する計画を破棄するのは政治的に難しいとの理由で、オバマ大統領はミサイル防衛網の簡易版を承認している。ロシアの戦略核兵器をターゲットとすることは禁じられているものの、ロシアにとってはNATO封じ込め策の一例として役立っている。

ロシアは気難しい隣人

オバマ大統領は当初、共通の関心事についてはプーチン大統領と協力し、他の事柄については可能な限り無視し続けることを望んでいた。同大統領は、ロシアを今も苦しめているポスト帝国主義の幻肢痛を理解できなかった。

オバマ大統領が「核なき未来」について語った時、ロシアの唯一信頼できる抑止力について、はく奪されるべきだと発言するのをプーチン大統領は耳にした。米政権がアジアに軸足を動かし、米軍の最後の戦車が2013年にドイツを後にした時には、ロシア政府は、米国の欧州へのコミットメント低下と受け止めた。

プーチン大統領による電光石火のクリミア占領と東ウクライナでの武装反乱はNATOを驚かせた。東欧諸国がロシア政府の意図を依然警戒しているとしても、他のNATO加盟国はロシアをこそこそした敵とみるよりも、気難しい隣人とみなすようになってきた。

米軍やドイツ軍のローテーション配備という東欧諸国を安心させるNATOの試みは、欧州の均衡を回復させるための重大な一歩となる。しかし、ミサイル防衛は、ロシアに何らの真の脅威を与えることのない政争の具だ。東欧諸国が米軍配備を得るためにそれを利用する一方、ロシアは、封じ込めというお化けだと申し立てることができる。

米国は、無知や傲慢、怠慢さを通じて、プーチン大統領を苛立たせてきたかもしれないが、好戦性を通じてではない。そのせいで、NATOはこれほどまで狂ったようにして追いつこうとしているのだ。

Lucian Kim/筆者は1996年以降、ドイツや東欧、旧ソ連諸国からリポートを続け、コソボやアフガニスタン、ジョージアやウクライナの紛争を取材。ブルームバーグのモスクワ支局やクリスチャン・サイエンス・モニター紙のベルリン支局で特派員を務めた経歴を持つ。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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