数日で内定出し切る新卒採用選考のカラクリ 6月1日解禁なのに大手企業はもう選考終了

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HR総研の緊急調査では、内定・内々定を5月末までに出し始めた企業は、5月末までが全体の56%、従業員規模1001名以上では49%だった。また、現時点(6月3日~6日時点)での「採用計画数に対する内定・内々定者数の割合」を聞いているが、その割合が7割超の企業が全体で23%、従業員規模1001名以上の大手企業に絞ると27%となっている。

これらのデータを整理して見ると、不思議なことに気づく――。

6月と同時に一斉に内定を出す大手企業

◇5月末までに面接選考を開始した企業
全体:77%、従業員規模1001名以上の大手企業:86%
◇5月末までに内定・内々定出しを開始した企業
全体:56%、従業員規模1001名以上の大手企業:49%
◇6月3~6日時点「採用計画数に対する内定・内々定者数の割合」が71%以上の企業
全体:23%、従業員規模1001名以上の大手企業:27%


大手企業の場合、5月末より前に面接選考を開始した割合が全体の傾向より高い(77%に対して86%)のに、5月末より前に内定・内々定を出すのは全体傾向より低い(56%に対して49%)。しかし逆に、内定・内々定者の6月初め時点での充足率は、大手企業が全体傾向を上回っている(23%に対して27%)。

大手企業は面接選考を開始するのは早いが、内定・内々定を出すのは遅い。ただしそれは、5月末までの話である。6月に入ると大手企業の内定・内々定の充足率が一気に高まる。こうした傾向をどのように読み解けばいいのだろうか。

大手企業の多くは、6月1日を選考の開始日というより内定・内々定出しの開始日だととらえている割合が多い。実質上の面接選考は早くから開始しているが、内定・内々定を出すのは6月1日まで引っ張るというケースが少なくないということだ。特に経団連傘下の大手企業の場合、5月末より前の面接を正式な面接と呼ばず、「面談」「質問会」「ジョブマッチング」「模擬面接」といった呼び方でカモフラージュしていることも多い。つまり、実質的な面接選考は行っているが、「正式な面接」は6月1日からというわけである。

大手人気企業の場合、採用で競合する他社に負けないようにするために、6月初旬に一気に内定・内々定を出し、学生の確保にかかる。数日で大量の内定・内々定を出し切り、選考を終了させるのは乱暴に見えるが、それまでに内定・内々定を出す準備を十分に行っているからこそできることである。

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