ドラギ総裁のパクス・ロマーナと欧州の展望 景気・経済観測(欧州)

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ただ、ECBの強固な防波堤を破るには、相当大きなショックが必要になる。筆者の見立てでは、それだけのインパクトを有するのは、上記リスク要因のうち、ギリシャのユーロ離脱危機再燃とスペインの格下げぐらいに思える。

イタリアの政局不安も確かに懸念材料ではあるが、次期首相が市場の信認を得られなければ、紆余曲折はあるにせよ、モンティ首相が再就任する形で決着する可能性が高い。また、銀行同盟の早期実現が難しいことは周知の事実であり、議論が紛糾したとしても、最終的な結論を先送りするだけの時間的な猶予があると考えられる。

ギリシャ、スペイン情勢を引き続き警戒

ところが、ギリシャのユーロ離脱危機再燃ともなると話は別だ。国債買い戻しの成功と支援再開に漕ぎ着けたことで、当面の危機は去ったとの見方もあるが、これによりギリシャ国民の感じる痛みが減じる訳ではない。経済環境や雇用情勢の改善を実感できない場合、国民の不満は今後も一段と高まるだろう。

たとえば、年央の中期財政計画や秋頃の来年度予算など、緊縮関連の法案審議に合わせて、ストやデモが先鋭化し、連立政権が崩壊するといったシナリオも考えられる。今はギリシャ支援再開で結束した支援提供国も、ギリシャで改革反対派が政権を握る事態となれば、結束が揺らぎかねない。

スペインの国債購入要請を巡っては、重要な政治日程と目された地方選挙が終わった後も、政府が支援要請に動く気配は見られない。長期国債利回りが持続的に6~7%台に定着しない限り、スペイン政府が支援要請に踏み切ることはなさそうだ。ECBの作り出した“無制限購入”の幻想を打ち破るには、国債格付けが投機的水準に引き下げられるぐらいのインパクトが必要になろう。

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