ノーベル平和賞のEU、欧州統合の歴史【1】
平和への貢献が評価され、欧州連合(EU)がノーベル平和賞を受賞した。欧州では単一通貨ユーロをめぐる混乱が続くが、その通貨統一も平和と経済発展を目指した智恵といえる。欧州統合に至る60年間の歴史を振り返る。
1939年、ナチス・ドイツのポーランド侵攻で突入した第2次世界大戦で、欧州は再び炎上した。ナショナリズムの相克は行き着くところまで行き着いた。欧州全域が焦土と化し、二つの大戦で数千万人の命が失われた。
戦後の荒廃の中で、欧州人は考えた。戦争だけはもう二度と起こしてはならない。気がつけば欧州は、米国とソビエト連邦という二大陣営の狭間で惨めな姿をさらしている。どうすればよいのか。
この歴史的な難問に、鮮やかな回答を見つけたのは、ジャン・モネという名のフランス人だった。モネはそのすばらしい発想と比類なき行動力で難問に解を与え、将来の欧州統合に至る道筋をつけることに成功した。数多い「欧州統合の父」の中で一人を選ぶとしたら、この人ジャン・モネを置いて他にない。
(「欧州統合の父」ジャン・モネ)European Union,2012
モネは考えた。独仏は何ゆえに血みどろの抗争を繰り返すのか。いちばんの要因は、両国の国境地帯にある戦略物資、石炭と鉄鋼の鉱脈の争奪戦にある。それならば、この資源を両国の共同の管理下に置けばよいではないか。