シチズン、スイス高級時計を買収する狙い フレデリック・コンスタントはどんな時計?

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しかし、1990年代からはスイスが装飾品として機械式腕時計の価値を押し出すことで復権、同時に新興国が低価格帯のクオーツ時計を作るようになる。間に挟まれたシチズンは腕時計業界における居場所を徐々に失い、2002年には赤字を計上するほどの不振に陥った。

苦境に陥ったシチズンは、高機能化を方針に据え、シチズンブランドの復権を図る。他社ブランドのライセンス製造から自社ブランド販売にシフトし、「エコ・ドライブ」と呼ばれるソーラー発電機能や電波とGPSを使用した時刻補正機能を軸に付加価値を向上。それにより2001年に比べて3倍近く平均単価が上昇し、業績も2015年度には2007年にホールディングス体制へ移行して以来の最高益を計上するまでに回復した。

しかし、スイス時計の牙城である機械式腕時計に関しては自社ブランドのみでの展開に限界があることも事実。そこで近年進めてきたのが海外メーカーの買収だ。2008年にはアメリカの中価格帯メーカーであるブローバ、2012年にはムーブメント製造に強みを持つスイスのプロサーを買収してきた。

そうした流れの中、今回フレデリック・コンスタントを買収することで、ようやく念願の高価格帯スイスメーカーを手に入れることになった。今後は両社の販路や技術インフラを融通し合うことで相乗効果を生み出していくという。

さらに上の価格帯も狙うか

スイスに拠点を構えるフレデリック・コンスタントの本社

ただ、今回の買収は、高価格帯の開拓をするうえでの第一歩に過ぎない。なぜなら、スイスの高級腕時計業界にとっては、40万~50万円の時計ですらまだ「お手ごろ価格」。シチズンにとって100万円以上の高級ブランドはまだまだ手薄で、開拓の余地があるからだ。

とはいえ、スイスメーカーはクオーツ時計に駆逐されかかったときに大幅な再編があり、多くのブランドはすでにスウォッチグループやリシュモングループといった巨大グループの傘下に組み込まれている。また、ファミリー企業の気風を色濃く残している会社も多く、買収には独特の難しさがある。

苦境から復活し、勢いに乗るシチズン。今後は今回の買収をテコにじっくりと高価格帯市場における足場を固めつつ、さらなる買収の機会を狙うことになるだろう。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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