地方創生に欠けている「チーム感」の作り方 意外と話し合わない地域の人たち

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永井:なるほど。私も企業でワークショップをしていて、まったく同じことを第三者として経験しています。

永井孝尚氏

25名くらいで4~5チームに分かれて、「当社の強みは何か?」「お客様はどのような課題を持っているか」、各チームで考えたことを発表して、全員で議論するんですが、「そんな強みや商品が当社にあるなんて知らなかった」「そんなお客さんもいたのは初耳だ」という感想がどんどん出てきます。

「そのお客さんに、この強みを訴求できるんじゃないか」という意見も出てきたりして、盛り上がるんですよね。

山下:つまり部署ごとに、たこ壺化しているんですよね。行政や市役所も、企業も同じですね。私は限界集落から政令都市まで、北海道から沖縄まで関わってみてよくわかったのは、これは日本人の特徴だ、ということですね。

永井:日本人の特徴ですか(笑)

「全体最適」の視点はあるか?

山下:会社でも、同じ組織で親しい人でも、部署異動の途端に変わることもよくあります。組織への帰属意識がすごく強いからですよね。その人は優秀で所属する組織のために働いていても、組織全体で見ると必ずしもそれが正しくないことがよくあります。ご本人は自分の組織のために純粋な気持ちで頑張っておられると思うんですが、地域全体をどうするかというときに、お互いの利害を越えて話し合えるかというと、そうならないんです。これは限界集落のような地域でも、東京ど真ん中でも、みんな同じでしたね。

永井:全体最適で考えるようにしたいですね。

山下:一般的に米国人は合理的に考えますが、日本人はあまりそういう面では合理的じゃないのかもしれません。それはいい部分かもしれませんが、地域づくりや変革する時は、それが大きな障害になります。一方で大地震のような危機があると、急速にひとつのチームに結束する。でも平時にはそうならない。だから地域づくりで大切で同時に難しいのは「最初に危機感を共有する」ことです。

確かに人口は徐々に減っていますが、何かの危機が急激に起きているっていう自覚がありませんよね。企業なら突然売り上げが下がって経営が厳しくなりますが、地域はそうならない。だから全体で危機感を共有するのは実に難しいんです。だからこそ、危機感を共有する限られた少人数でやっていくことですね」

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