英米でも中央銀行の役割を巡る論争

新政権から政策変更迫られる日銀(日銀ウォッチャー)

とはいえ、失業率を低下させるために、FRBはインフレ予想が目標の2%よりも一時的に上振れしても構わないとの姿勢を示した。それは前述の名目GDPターゲットの考え方を一歩早く実現したものと見なすこともできる。今後の日本において、「FRBを見習って日銀も雇用拡大に努力すべきだ」という意見が増える可能性もある。

しかし、FRBの新しい戦略には心配される点もある。金融政策は本質的には長期的な失業率を操作することはできない(バーナンキ議長も12日にそれを認める発言をしている)。また、近年のイギリスのように景気低迷下でインフレ率が3~5%超の水準まで上昇するようなことがあると、FRBは「物価の安定」と「雇用の最大化」の対立に悩むことになる。

近年の米国の失業率の低下が遅いのは、構造的な問題も影響している。米国ではIT関連の開発者は絶対的に不足して、それらの賃金が上昇してきたのに、一方で中級スキルの仕事である工場のライン労働者や秘書などのアシスタント業務の求人はここ数十年で大幅に減少した。大きなミスマッチが続いてきている。それは本来、教育改革や産業構造の変更によって対処すべき問題である。それにもかかわらずFRBが「大胆な」金融緩和策による信用拡大で失業率を低下させようとすると、いずれ、あちこちで金融的不均衡(いわゆるバブル)が膨らむおそれがある。

FRBは12月のFOMCで、来年1月以降も長期国債の買い取りを継続することを決めた。9月に決定されたMBSの買い取りと相まって、FRBのバランスシートは今後拡大していく(GDP比で見れば、日銀ほど大規模ではないが)。FRBが資産買い入れ策を続ければ続けるほど、将来の出口政策の困難度は高まっていく。

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