それでも米国の成長には自由貿易が必要だ

大統領選の候補者はバランス感覚を持て

欧州連合(EU)との環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)は、米国の対EU輸出を年間3000億ドル増やし、米国の国内総生産(GDP)を年1250億ドル上積みする。さらに、典型的な米国人家庭の購買力を900ドル近く高める。欧州側にも同等の恩恵が見込める。

環太平洋経済連携協定(TPP)もまた、米国の労働者や農家、企業の利益を増大させる。アジア太平洋地域の国々の多くはいまだに、米国からの輸入に対する固い障壁を保持している。TPPは関税を下げ、アジアの消費者がもっと米国製品を購入可能にする。ピーターソン国際経済研究所の調査によれば、これにより米国の総所得は年間で0.4%(約770億ドル)増える。

自由貿易に全く問題が無いわけではない。利益が広く分散するのに比べ、コストは多くの場合、一カ所に集中する。そして非常に具体的な悪影響が出かねない。メキシコとの競争で米国人労働者は賃下げを強いられたり、働く場所が国境の向こうに移されたりするかもしれない。

真に必要な指導者とは

米国人に必要なのは、自由貿易にバランスをもって取り組み、長期的な利益を勝ち取れるようにできる勇気を持ち合わせ、一方で解雇されそうな人々に短期的な支援を与えられる政治的指導者なのだ。

北大西洋条約機構(NATO)の元事務総長で長年にわたる米国の同盟国の元首相として、私は、米大統領候補の面々に自由貿易へのバッシングをやめ、バランスの取れた取り組みに向けた働き掛けを始めるよう促したい。その取り組みは経済不安を和らげ、米国の繁栄を今後数十年にわたって確かなものにする。

米国は「再び偉大な国」になる必要はない。米国は世界で突出した経済力を持つことから世界で秀でた国であり続けている。米国が直面している課題は、その偉大さを遠い未来まで保ち続けられるようにすることだ。そのためには、自由貿易を長年にわたって追求するとともに、被るコストが恩恵よりも大きい少数の米国人の真のニーズに応えることが必要になる。

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