ウェンディーズCEOが語る、FK買収の真相 なぜファーストキッチンを買収するのか

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最初のコラボの店は2015年3月に六本木でオープンした。売上高は前年比で20%増もいけば成功だと思っていたが、当初は100%増(2倍)だった。オープン景気が落ち着いても、60%増で推移している。

このデフレの状況下では、好調な外食チェーンですら、既存店売上高は横ばいか少しマイナスぐらい。大成功だった。六本木は立地が少し特殊なので、上野でも2015年8月にコラボ店をオープンした。ここは30%増ぐらいで落ち着いた。この成功事例が大きな自信となった。

――外食チェーン同士が、お互いのブランドを共同させた店舗展開することはほとんどない。「モスバーガー」と「ミスタードーナツ」がコラボした「モスド」が、数店舗あるだけだ。特にグローバルで展開する米国の会社はブランド管理に厳しい。どうやって実現させたのか。

コラボ店舗を実施するにあたっては、米本社の説得に相当な時間がかかった。だが、彼らとはずっと一緒にやってきたという信頼関係がある。これまでにやったことのないことだが、「日本での拡大につながる仕組みならやってみよう」ということになった。コラボ店舗で成果が出たことは良かった。こうした実績なしに、ファーストキッチンをいきなり買収することは無理だっただろう。

「私は当面、手を引くつもりはない」

――ファーストキッチンは136店を展開する。このコラボ店舗は何店まで増やすつもりか。

アーネスト・比嘉/1952年、ハワイ生まれの日系3世。食品の輸入販売を手掛けるヒガ・インダストリーズの代表取締役会長兼社長。「ドミノ・ピザ」や「ウェンディーズ」を日本に上陸させた。(撮影:梅谷秀司)

数は決まっていないが、六本木や上野のような路面店を中心に数十店をコラボ店舗に転換していきたい。ショッピングセンター内の店舗など、ファーストキッチンのままのほうが良いところもある。

――『会社四季報未上場版』によれば、ファーストキッチンの業績は2014年12月期で売上高91億円、営業利益は2.1億円、純利益は0.76億円だ。この規模の会社を数十億円で買収するのは割高ではないのか?

今回はコラボの実績もあるし、通常のディールとは違う。どのような付加価値があるかが重要だ。企業の価値はEBITDA(利払い前税引き前償却前利益)倍率などの計算式では測れない。

――ウェンディーズの経営権はロングリーチグループが取得する。業界関係者の間では「比嘉氏はウェンディーズから手を引くのではないか」といううわさも流れている。

ファーストキッチンの経営体制についてはこれから考える。彼らもコラボ店の成功を通して参加意識を持っている。今回は買収という、成長戦略としてベストな解決策が見つかった。私自身、とても期待している。当面、手を引くということはない。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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