長期金利は過去最低の0.430%を割るか? 市場動向を読む(債券・金利)

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一方、当時と現局面の相違点は、高値警戒感の強弱だ。それは単純だが決定的な違いである。長期金利は03年6月に0.430%まで低下した後、急上昇に転じ、翌7月初めには瞬間的だったが1.40%まで跳ね上がった。

そのような相場暴落に伴う損失の急拡大は、たいへん苦々しい記憶として、9年半経った今も市場心理に深く刻み込まれている。一種のトラウマ(心的外傷)になっていると言っても過言ではない。一段の金利低下・相場上昇に対する高値警戒感があっさり後退したり、払拭されたりする可能性は今のところ低いと思われる。

自民党のリップサービスに要注意

ただし、この点で気懸かりなのは、当時と同様に、国債管理政策に対するモラルハザード的な過信、を生みかねない材料が出てきたことだ。それは、次期政権を担うだろうと市場が予想している自民党の政権公約である。そこには、安倍政権の財政規律を心配している債券市場を安心させようと企図した多分にリップサービス的な政策やキーワードがてんこ盛りになっている。

すなわち、『15年度には国・地方の基礎的財政収支赤字のGDP比率半減を実現し、20年度までをめどに黒字化する目標』を達成するために、成長優先主義の安倍氏の本音とは思われない消費税増税の予定通りの実施(『消費税は14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げ』)を明示した。

『半年前に、経済状況を確認の上、予定どおり実施するかの判断を内閣が行う』という留保条件も一応は付しているが…。また、『財政健全化中期計画』や『財政健全化責任法』の策定に意欲を示すとともに、『国債管理政策』の実行を繰り返し強調し、さらには『国債価格が暴落する「X-day」を防止するための処方箋』まで用意するという。

低金利と運用難に呻吟する債券投資家がこれらを真に受け、当時と同様、相場急反落やバブル崩壊は未然に回避されるに違いないなどと思い込んでしまう可能性がある。その場合には、前述した国債イールドカーブ上の循環物色メカニズムが起動し、相場全体が大きく上昇することになるだろう。

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