長期金利は過去最低の0.430%を割るか? 市場動向を読む(債券・金利)
第2は、根深いデフレ構造と金融危機を背景とした金融緩和政策の長期化観測である。物価は景気拡大局面にもかかわらず、需給ギャップのマイナス(=供給超過)状態が続き、下落傾向から抜け出せなかった。
消費者物価指数(値動きが大きい食料品を除く)は、前年比マイナス1%前後。日本銀行は金融システム・リスクをも考慮し、非伝統的な金融緩和政策を断続的に強化していった。
政策金利の誘導目標水準をゼロとする完全なゼロ金利政策、それをデフレ脱却まで続けると言うコミットメントを付す時間軸政策、さらには日銀の当座預金残高に目標額を設定し、その達成に向けて資金供給を拡大して行く量的緩和政策の3本柱である。
そうしたなか、債券市場では、ゼロ金利政策が相当に長引くだろうという思惑を背景に買い安心感が強まった。投資家は『今のうちに少しでも高い利回りを確保しておこう』として、長期債と超長期債の循環的な物色(=循環物色メカニズム)に奔走。結果、長期債と超長期債の利回りが競い合うように下がり、国債の利回り曲線(イールドカーブ)はあたかもクルマのアクセルがフル・スロットルまで踏み込まれたかのごとく全体的に沈み込んでいったのだった。
「VaR」の落とし穴と「国債管理政策への過信」
第3は、銀行における「バリュー・アット・リスク(Value at Risk=VaR)」というリスク管理手法の“誤用”だった。前述した「質への逃避」による株安・債券高というトレンド相場が、債券相場の価格変動性(ボラティリティ)というリスク指標を図らずも低位安定化させた。
すると「VaR」に従えば、世界史上最低レベルへの金利低下にもかかわらず、銀行では計算上のリスク許容度すなわち債券投資余力が大きくなった。そのことが「質への逃避」というインセンティブ(誘因)とあいまって、相場水準に対する高値警戒感を後退させた。結果、債券投資家は、国債保有残高の半ば機械的な積み上げや長期債・超長期債の買い回転というリスキーなポジション操作(ディーリング)へと駆り立てられていったのだ。
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