——コミュニティのために頑張る人たちが、雇用をたくさん生み出すというシナリオは考えられませんか?
渡邉:そうなればいいですけど、そうした仕事が社会の中でメジャーになるとは、到底思えない。そういう仕事は「社会に貢献する」という強い動機がないと絶対できない。でも、ほとんどの人はそこまで強い貢献動機を持っていないと思う。
藤原:20年くらいのタームで考えると、親世代から子世代への土地の移転が起こって、住宅を相続で引き継げる人が増える。そうして住居費がぐっと下がると、年収200万〜400万円ぐらいの人たちが中間層と呼ばれるようになると思う。今は中間層というと、年収400万〜800万円くらいのイメージだけど、それが変質していくんですよ。
では、その人たちが不幸せかといえば、そうでもない。
米国にも1億人くらい低所得者層がいて、ヒスパニック系で、英語がほとんどできない人もたくさんいる。その人たちが、幸せでないかというと、そうでもなくて、階層を変わりたいかというと、そうともいえない。コミュニティで楽しくやっている人も多いわけです。
だから、ちょっと言い方が悪いかもしれないけれど、日本にもすでに、米国におけるスパニッシュなコミュニティに似たものが出てきていると考えられませんか。
渡邉:スパニッシュの出生率は高いですし、変質した中間層は、ちゃんと子どもを産むかもしれません。
藤原:もし住宅が供給されて、それがある程度広くて、そんなにおカネがかからないようになればね。本当は次に政府がやるべきは、高校の無償化ではなくて、小中学校の無償化なんですよ。ただ、それにはすごくおカネがかかる。
小中学校の場合、月に教材料が約5000円、給食費が約5000円かかっている。だから、月に1万円、年間で12万円くらい、小中学校の9年間を通じて私費がかかっているんですよ。これを放っておいて、高校を無償化するのは、本当はおかしい話なんだけど、義務教育費の無償化は莫大なおカネがかかるので、民主党はできなかった。
渡邉:年収200万、300万円の人同士で結婚して、世帯年収が500万くらいあって、教育費がもうちょっと下がれば、確かに暮らしていけそうですね。
藤原:住居費が下がった前提で教育費が下がればね。