想像と違った!「こども食堂」の本当の意義 「子どもの貧困」対策になるか
「こども食堂」の存在を知るには情報収集力がいる。足を運ぶには行動力や交通費を捻出する経済力も必要だ。それができる人はおそらく、貧困のどん底にはいないだろう。
では、こども食堂は貧困対策には役立たないのか。どうしたら、よりニーズの高い人に来てもらえるのか。岩手県盛岡市でひとり親支援を手掛けるNPOインクルいわてが企画・実施する「こども食堂」からヒントを探る。
しゃれたカフェのような趣
3月27日(日曜日)の午後5時30分すぎ。JR盛岡駅から車で10分ほどの市街地にある「フキデチョウ文庫」には、すでに10名近い子ども達と同数の大人が集まっていた。
アーケードが続く商店街を出て大通りを渡り少し歩く。有名蕎麦店の数軒先にある白い建物は、しゃれたカフェのような趣だ。入り口には介護車両が止まっている。
フキデチョウ文庫は私設図書館と通所介護施設を兼ねている。1階には書籍や漫画の棚や宿題ができる大きなテーブル、2階は広いリビングダイニングとキッチン。内装は木で出来ていて落ち着く。2階は平日の午前9時から午後3時まで、通所介護に使われている。夜間や休日にこのスペースを活用して、今年1月から月2回のペースで「こども食堂」が始まった。
この日のメニューは焼肉丼。レタスや焼いたピーマン、ネギが添えられ、白菜が入った野菜の味噌汁、にんじんとじゃがいものきんぴらが付く。テーブルには大皿に盛られたりんごやみかん。栄養のバランスがよい。
午後6時頃から、1人ずつ盛りつけられたお盆を持ってテーブルにつき、順に食べ始める。母親の隣に座る子。なついている大学生のお兄さんのために、自分の近くの席を確保しておく子などさまざまだ。
調理に携わるのは、NPOインクルいわてのスタッフ3名とボランティア。この日は、合計10名ほどが立ち働いていた。配膳が一段落した6時半頃から調理スタッフとボランティアも参加者に混じって食べる。筆者もひとつのテーブルで一緒にいただいた。
顔見知り同士や初対面の人たちが世間話をしながら食事が進む。向かいの席にいた小学生がよく野菜を食べるので「えらいね」と声をかけると、母親が「ここではしっかり食べようねって、来る途中、話してきたんです」と答える。学校とは違う友達と遊べる場を子どもも楽しみにしている、という。毎回20~30人が参加するそうだ。
一緒に食事をした人たちは、子どもの食事マナーをきちんとしつけている印象を受けた。「困窮している様子の人はいないように感じたのですが……」。
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