村上隆(下)「クールジャパンはアホすぎる」 「未来国家・日本」が抱える大問題

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たとえば、『週刊少年ジャンプ』的、大規模な漫画ビジネスのシステムの現在のサバイバル方程式は、『週刊少年ジャンプ』の鳥嶋編集長が集英社で作り上げたもの、と言えるのではないかと思います。

マンガだけでなく、テレビや映画といったマルチメディアで稼ぐ収益構造を前提として、マンガや人材育成に投資していくシステムを作り上げた。1つの完璧なクリエーティブエコシステムですよね。金儲けをして、儲けた資金で未来をつくる。そういうエコシステムこそ評価できると思います。

スティーブ・ジョブズの評価点は、資本主義というものを<ものづくり>に引きずりこんだことです。

日本は、<ものづくり>はすばらしいのに、資本主義に負けてしまっているわけです。だから、経済、資本主義が何かということを、もっと学校が徹底して教えるべきですよ。結局、商いをもっとリスペクトするような社会構造を作り、「商いは文化だ」という認識を浸透させないと、日本の文化は成長しません。

欲求のレベルがすごく幼稚

日本では、お金持ちになった人が、バカみたいに外車や改造バイク、複雑な時計を買ったり、芸能人と結婚したりしてしまう。それは、ブランドだからという理由において、決定している。自分の人生哲学はないわけです。他人の目を気にし続けている。欲求のレベルがすごく幼稚なわけです。

だから、儲けたおカネをどう使うかを、学校で教えたほうがいいと思う。経済的に成功したロールモデルのような人がたくさんいて、その人たちの生き方を学校で勉強するようになるといいのではないでしょうか。

まぁ、悪い部分ばかりじゃなくて、すごいなぁと思える面として、たとえば、居酒屋の「月の雫」の安さとおいしさのバランスは驚異的ですよ。なぜあれだけの低価格で提供できるのか。もし外国からの旅人が日本に来たら通い詰めてしまうと思います。「サイゼリヤ」とかも、どうなってんのよ?ってレベルです。

このクオリティの高い食産業のシステムは、マンガ界と同じく、国内の競争が激化しているがゆえにできあがったものです。そんな月の雫やサイゼリヤのような低価格帯の飲食チェーンの仕組みを批評的に語れるようにすることが大事です。さもないと、ウォークマンがiPodに負け、iモードがiPhoneに負けたのと同じようなことが起きてしまう。

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