《私のアラサー論》社会の価値観の揺り戻しに戸惑っている 藤田晋・サイバーエージェントCEO
私の世代くらいまでは、いい大学に入って大企業に入ることが成功パターンだと誰もが疑わなかった。特に親世代はそうだった。
私も大卒後ベンチャー企業に入り、その後すぐ起業したが、当時はどうして? とよく尋ねられた。
最近は不況でまた方向感が変わりつつあるように見えるが、1990年代の不況は大企業に勤めることだけが働き方ではないことを世に認知させた。
人は人、自分は自分と考えているから世代論はよくないかもしれないが、30歳前後の年代は、うちの社員を見ても、がつがつしていない。堀江(貴文)さんの事件でネット業界で目立つことが必ずしもプラスにならないと思われて皆が萎縮してしまった面もあるが、この世代は特におとなしい印象がある。
彼らが就職活動をし、新入社員の頃は、これからは個人の実力だとか成果報酬だとか、キャリアを磨くとか、そんなことが盛んに言われていた。それが今ではチームプレーも大事だ、成果報酬だけではいけないとか、まるきり違ったことが言われている。
社会の価値観や経営の考え方もそうで、ひところは株主還元が盛んに言われていたが、今ではさっぱり口にされなくなった。この揺り戻しの大きさに、アラサー世代は戸惑っているように映る。
2000年前後、彼らの就職時期はちょうどネットの勃興期で、この業界にどっと人が入ってきた。ところがネットバブル崩壊で一気に人がいなくなってしまった。
では大企業に入社した人たちは安泰かといえば、明るい未来を感じているわけでもなく、居場所を失っている状態だ。一方、起業家も、私たちの世代だと堀江さんとか野尻佳孝さんなどがいるが、30歳前後はほとんどんいない。