《私のアラサー論》社会の価値観の揺り戻しに戸惑っている 藤田晋・サイバーエージェントCEO

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熱量を持った人がいなくなった

ベンチャー経営は何もないところから始めるわけだから、パワーというか、“熱量”を持っていないと続かない。ところが彼らは若くして、ネットバブルとそれが崩壊するのを間近に見てしまい、逆に熱量を持ってはいけないと感じてしまったのかもしれない。

私自身の経験からしても、ベンチャーを経営しようとすれば、少々でかいことを言うくらいのタイプじゃないと上場するまで持っていけない。それが今では上場しないうちから小さくまとまって、大きなことを言って失敗する人をバカにするような雰囲気になってしまっている。

本来は30歳前後は転職するにはいちばんいいタイミング。キャリアアップを考えるには最適であるはずだが、この不況下では現実的に難しい。不動産と同じで価格が下がっているときに無理に売っては損をする。結局、不満があっても今、属している組織にいるしかない。現在の30歳はそうした屈折した状況にある。

本来ならばこの年代が転職市場で活発に動いていてもいいのに、それがないから、余計に元気がないように見えているのかもしれない。

この世代は社会起業家が増えているというが、その前にすべきことがあると思う。ビル・ゲイツのように死ぬほど稼いで社会に貢献するというならわかるし、自分もいずれそうありたいと考えるが、経営者として事業を大きくすることが今の目標だ。長く経営者として責任とプレッシャーと闘っている私からすれば、社会起業家はそうしたものから逃げているように見えてしまう。

ふじた・すすむ
1973年生まれ。青山学院大経営学部卒。98年サイバーエージェント設立、2000年史上最年少で東証マザーズに上場した。30代のIT経営者の代表的存在。

(撮影:吉澤菜穂/アフロ)

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