日本板硝子、巨額赤字からどう立て直すのか 業界のライバル企業からは周回遅れ
こうした動きを背景に、2017年3月期業績は、円高が200億円強の減収要因となるため、売上高は前期比1%減となる。だが、営業利益は前期比で120億円も改善する。
利益の頭は円高が抑えるものの、ピルキントンの買収後10年を経て、買収に伴って発生した無形資産償却が前期までの80億円から50億円も圧縮され、30億円に減ることが大きい。さらに不採算事業からの撤退に加え、2016年3月期に減損を行った結果、70億円超の改善が見込まれるからだ。
ただ、180億円にも上る金融費用などが依然として重しとして残り、純益も50億円にとどまる。回復と呼ぶにはほど遠い状態だ。2016年度の純益283億円が見込まれる国内売上高トップのAGC旭硝子は言うに及ばず、同3位のセントラル硝子(同100億円)、同4位の日本電気硝子(同100億円)にさえ届かない。日本板硝子は今期にフリーキャッシュフローを億円で3ケタ台に回復させるため、資産流動化に加え、不要不急の投資を抑制する方針を打ち出している。
周回遅れの状況を抜け出せるか?
一方、AGC旭硝子は、日本板硝子が大損を出したブラジルで2018年までにガラス工場の生産能力を2.4倍に増やし、国内でも車載ディスプレー用ガラスの生産能力を高める。それだけではない。クロールアルカリやフッ素系化学品事業の育成にも力を入れており、足元ではガラス事業と並ぶほどの柱に育ちつつある。
祖業がソーダ灰であるセントラル硝子も、メタル配線形成に使われる六フッ化タングステンや医農薬中間体の工場を増設、フッ素系発泡剤工場を新設など、成長のためへの投資を積極的に行っている。
今2017年3月期からピルキントン買収で背負った借金が大きく減るとはいえ、日本板硝子は足元で完全に周回遅れとなっている。会社側は「成長投資は継続する」としているが、ガラス事業専業としての強みは今ひとつ見えにくい。たとえば、ベトナムで生産していた薄板高機能ガラスも立ち上げに手こずっている間に、中国企業にシェアを奪われ、ついには生産休止にまで追い込まれた。中国ゾンビ企業が世界の付加価値品の市場に徐々に侵蝕し、売価政策に混乱をもたらしている中で、先頭集団に追いつくのはなまなかなことではない。
最悪の状況を乗り切ったとは言え、競合他社に迫る強みは打ち出せていない。日本板硝子が周回遅れから脱するまで、厳しい茨の道が続きそうだ。
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