政府vs.外国ファンド Jパワーめぐる攻防
多くの注目が集まる中、日本政府は4月16日、結論を下した。
「本件届け出に係る対内直接投資を中止すること」
今年1月、英国系のザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)が、電力卸大手Jパワーの株式を20%(現9・9%保有)まで買い増すため、政府に行った事前届け出の審査結果が出た。届け出は外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づくもの。過去3年でこうした外国投資家の事前届け出は約760件あり、すべて承認されてきた。「中止」の勧告は今回が初めてだ。これまでの場合、審査に要する期間は2週間程度だったが、今回は勧告まで実に3カ月もの時間がかかった。電力事業者を所管する経済産業省は「例外中の例外」と位置づける。
Jパワーの帰趨は核燃サイクルにも影響
外為法では「国の安全」や「公の秩序の維持」を目的に、電気・ガス・通信・放送などを投資規制業種に指定。外国投資家が行う対内直接投資において、上場企業の株式10%以上を取得する際、取得目的や経営関与の方法を記して事前に書類を提出させる義務を課している。
会見において財務省と経済産業省の担当者は、Jパワーが公共性の高い企業だと強調した。同社は国が推し進める核燃料サイクルの要であり、全国の基幹送電線網も有する。また、TCIがJパワーに要求するROAやROEといった経営目標の実現方法が明確ではなく、これまでの投資方針などから判断すると、電力の安定供給や核燃サイクルに対する影響を払拭できないともした。結果、「公の秩序の維持」を妨げるおそれがあると認定したわけだ。
Jパワーは戦後の電力不足解消を目的として、1952年に設立された国策会社。その後、特殊法人改革の流れを受けて97年に民営化が閣議決定された。売上高こそ6000億円に迫る巨大企業だが、東証上場を実現してまだ4年足らず。公開企業としてのキャリアは浅い。目下、青森県・大間において、炉心すべてでウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を燃やす世界初となる原子力発電所の建設を計画している。完全民営化を果たしたとはいえ、プルサーマル政策の先兵を務めており、依然、国策を担う存在だ。
一方、同社の筆頭株主であるTCIはロンドンに本社を置く。出資者は大学基金や保険会社などの機関投資家で、設立5年目ながらすでに約100億ドルの預かり資産を運用するという。ドイツ取引所など、インフラ系の企業への投資実績が多いことで知られる。財団を経由して運用資産の一定額を、途上国の子供向けに毎年寄付しているという。