政府vs.外国ファンド Jパワーめぐる攻防

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同ファンドの香港支社を統括し、日本の投資責任者であるジョン・ホー氏は「われわれは株主としての権利を行使して企業価値を高めたいと思っている。そうした投資家に対し、日本では歓迎されないと政府が言うのは、市場に大きな影響を与える」と強く牽制してきた。

対して日本政府は対日投資の促進施策や投資実績の増加を示し、外為法による勧告が“投資鎖国”を意味するものではないことを強調する。財務省によると、公益性の高い企業に対して、ファンドが経営への具体的関与を挙げて投資の届け出をしたケースは初めてだという。

5つの株主提案 次のヤマ場は6月総会

だが、これを特例として片づけてよいかは疑問だ。TCIと同じような届け出を行う外国投資家が増えた場合、政府は市場の理解を得られる適切な対応を示せるかが重要になってくる。勧告について「やや唐突な印象を受ける。こういう事態が想定されたのならば、民営化に当たり何か事前に策を打てたのではないか」(市場関係者)との声もある。

政府から中止勧告が出たとはいえ、Jパワーも安穏としてはいられない。役員はTCIとの面談を繰り返しているが、議論は平行線をたどったまま。一連の株主提案はすべて退けてきた(下年表参照)。TCIが3月に示した提言書に対しても、中垣喜彦社長は「われわれの基本的な経営行動にそぐわないもの」と不快感を隠そうとしない。

勧告が決まった当日、ホー氏は「責任ある投資家として、企業価値の向上とコーポレートガバナンスの改善を求めていく」と話した。Jパワーは約760億円を投じた大型投資案件。だが、現状の株価は買値を下回った状態にある。勧告を受けた翌17日には、6月の株主総会に向けて、持ち合い株など株式投資に対する制限、社外取締役3人の導入や増配など、合計5つもの株主提案を行うと発表。その行動はさらに活発化している。昨年にTCIが行った大幅な増配要求は株主総会で否決されたものの、3割強の賛同を集めている。

TCIは勧告の諾否を25日までに決める必要がある。仮に応諾しなければ、政府が行政処分として投資の中止命令を下すことになる。しかし、異議申し立てを行い、その採決が不服であれば、行政訴訟へ持ち込む手だても残されている。政府とファンドによる“正論”のぶつけ合いは長期化する可能性もある。

(井下健悟 =週刊東洋経済)

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