一方、安倍政権側は、伊勢志摩サミットでどれだけ国民の好感度をアップできるか、逆に失敗は無いか、ということを見極めて、最終的な判断を下すのだろう。政治的な文脈では、サミットは安倍政権の好感度アップのためのイベントだ。目新しい成果はありそうに見えないが、オバマ大統領の広島訪問も含めて、政権寄りのメディアは、大いに成果を強調することになろう。ただし、これらは前々から予想できていることなので、マーケットにたいした影響はないはずだ。
日本一国の経済を見ると、大規模な金融緩和にもかかわらず、十分な程度のインフレになっていない。2014年の消費税率引き上げ(5%→8%)以降、消費が低迷していることの影響が大きい。これを解消するためには、消費税率引き上げの延期と(「凍結」ならなお良いが)、補正予算による有効需要の追加が必要だ。これは、前回の消費税率引き上げによって、いわば「逆方向に打たれた矢」の後遺症を払拭するための方便の一つなのだが、政府は、「デフレ脱却」を「財政再建」に対して優先していることを明確に示すべきだ。
ところが、マクロ経済学の標準的な教科書では、一国が財政出動しても、その国の実質金利(インフレ率を差し引いた金利)が上がり、自国通貨が騰貴することを通じて、政府が追加した需要が海外に流出して、国内に十分な効果をもたらさないとされている。
旧「第二の矢」再発射と金融緩和の組み合わせ
安倍首相は、この点を踏まえて、外遊先で協調的な財政拡大の根回しをしようとしたものと思われるのだが、この点については、今回のサミットで成果が上がるようには見えない。結局、日本政府としては、他国の賛意を得られても得られなくても、財政的な需要追加を行いつつ(当然、消費税率引き上げは延期する)、円高を避けるために日銀による追加緩和の効果に期待するような政策パッケージを選択することになるだろう。
サミット後は、「衆参同日選」があってもなくても、しばらく政治の季節になる。財政的な拡張による旧「第二の矢」の再発射と金融緩和を組み合わせつつ、与党側でも福祉・再分配を強調した、選挙向けの政策を打ち出すことになるだろう。だとすれば、性急に円安を求め過ぎて、アメリカからダメ出しを喰って、円高に持って行かれるような下手を打たなければ、株式市場的には、しばらくの間環境の好転が望めるのではないだろうか。
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