モノが売れないのは、「男性不況」が原因?

縮小する「男の消費」、堅調維持する「女の消費」

どんどん売れなくなる男性向け消費財

少ないお小遣いをやり繰りして何とかしのいでいる状況なので、男性が主なユーザーである嗜好品は、ここ数年一様に売り上げを減らしています。

たとえばたばこの11年の販売数量は1975億本ですが、これはピークだった96年を100とすると、57%の水準です。

たばこに関しては、年々高まる健康志向や、健康増進法の施行を受けて広がった分煙化の影響など、他の要因も大いに影響していると思います。しかし、過去15年間のうち4回行われたたばこ税の引き上げの年に、より大きな販売数量の減少が確認できますので、お小遣いが減ったこととの因果関係は否定できません。

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酒類消費量は、右肩下がりを続けている。

男性の嗜好品の代表格のお酒も同様で、消費量はピーク時からすると85%の水準まで減っています。

酒種別の内訳を見ると、最も市場の大きいビールの落ち込みが顕著です。これは、より酒税が安く、安価で販売された発泡酒、そしてその後に登場した第3のビールなど低価格の代替商品の登場が大きな影響を与えているのは間違いありません。

一方、いわゆる高級酒と呼ばれるウイスキーやブランデーの低迷ぶりは目を覆うものがあります。ウイスキーはメーカーの努力でハイボール人気が復活したこともあり、復調の傾向も見られますが、それでもピーク時に比べると半分以下の水準です。ブランデーに至っては、さらに市場が縮小してしまっています。

このように、お酒は全体の販売量が縮小したのに加え、高級品からより安いお酒へシフトする傾向が続いています。その結果、酒税収入はピーク時から8000億円も減ってしまったのです。

たばこも、度重なる増税が繰り返されたのにもかかわらず、販売数量が減少したことによって、税収がピークから2000億円も減っています。

酒税と合わせると、男性の嗜好品の販売低迷によって、実に合計1兆円もの税収が減ってしまったのですから、無視することはできません。

販売が落ち込んでいるのは、より経済全体への影響が大きい自動車や家電などの耐久消費財も同様です。

まずは自動車ですが、国内の乗用車販売台数は、11年に過去20年で最低の352万台まで落ち込みました。これは、東日本大震災とタイの洪水による供給制約の影響が大きいので例外的な数字ですが、この年を除いても、ここ数年400万台の前半で推移しています。これは、最盛期の約2割減の水準です。

次に家電ですが、こちらもエコポイントやテレビの地上デジタル放送への移行などがあった時期は、市場に活気が戻りました。しかしその時期が過ぎると、一気に販売が低迷。電機メーカー各社は、販売不振から巨額の赤字を計上し、株価は歴史的な低水準に沈み込むなど、今も苦境にあえいでいます。

家電の場合は、歴史的な超円高や韓国メーカーの台頭などが不調の原因に挙げられますが、男性不況の進展により、メカ好きな男性の財布のひもが極端にきつくなってしまったことも、無関係ではないでしょう。

女性の市場は減っていない

男性がメインユーザーである嗜好品として、たばことお酒の市場動向を見てきましたが、女性の嗜好品市場はどうなっているのでしょうか?

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スイーツ市場は、堅調を維持している。これは、多くの「女性向け市場」に共通の特徴だ。

国内のスイーツ市場の推移をみてみると、03年からほとんど変化しておらず、データがある直近の10年は1兆7800億円でした。

市場が拡大しているわけではありませんが、ほぼ前年並みを維持しているので、たばこや酒とは明らかに違う動きをしています。

同じように、女性がメインのユーザーである、化粧品市場やエステティックサロンなどのビューティ産業もスイーツと同様に、ほとんどが微増か現状維持にとどまっており、男性メインの市場とは趣を異にしています。

このように女性主導の市場の売り上げがあまり減らなかったのは、経済的に余裕のある女性が増えたことがその要因だと考えられます。

男女の給与差が急激に縮まっていることは本連載の第2回でもお伝えしたとおりです。そもそも男性に比べ、女性のほうが消費への関心が強いのは、一般的によく知られています。そんな彼女たちが経済力をつけてきているとなれば、企業が見逃すはずがありません。

その結果、実は一部の消費の現場では、「男性向けから女性向けへのシフト」ともいえる現象が起きているのです。

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