三越日本橋本店、改装に200億円も掛けるワケ 本館1階のテーマは「白く輝く森」に
そこで今回導き出した答えが、「文化」を前面に押し出したストアコンセプトだ。これまでは年齢や所得など属性を基に対象顧客を考えてきたが、リモデル後は、どんな趣味(日本文化好き、旅好き、ネコ好きなど)を客が持っているのかを考え、その価値観で引きつけていく方針だ。「いわゆる商圏がなくなり、世界中のお客様が相手になる。文化好きの40代の方に来店して頂きたい」(同店の栗原憲二・営業統括部長)。
商品構成も幅広さから深さを追求。これまでのモノ中心から、「モノ+使い方」を販売員が”チーム”で接客する手法に切り替える。その売場に客が欲しいモノやサービスがない場合でも対応できるように、販売員同士が情報を共有してつながる仕組みを構築していく。
主力の衣料品は大幅に縮小へ
店舗をオープンに話しやすい空間にするため、環境デザインを建築家の隈研吾氏に依頼。本館1階のテーマを「白く輝く森」とし、全面白を基調とした内装デザインとなっている(右パース参照)。
商品構成の変化で大きく圧縮されるのが、これまで百貨店の主力商品だった衣料品だ。三越伊勢丹の2015年度決算では、衣料品の売上高構成比は36.3%。食料品(21.9%)、雑貨(18.8%)を抑え、依然として売上規模は大きいものの、前年度比では0.4%減と低落傾向が続いている。化粧品、美術、宝飾品などの牽引で雑貨が20.8%伸びたことと比べても、勢いの差は歴然だ。「衣料品は各フロアにまたがって重複もあった。整理してできるだけ一カ所にまとめたい」(中店長)という。
5月20日、三越日本橋本店の中央ホール、特別食堂などは重要文化財指定を受け、「文化」を訴求するうえで一つ箔がついた。
あとは実際、さらに客を呼べる店に生まれ変わらせることができるか。金太郎アメのように変わりばえしない店舗に、「百貨店関係者のほとんどが同じ悩みを持っている。新しい百貨店の形を示したい」と中店長は力を込めた。同店の挑戦は、百貨店業界全体の命運も占う、重い責務を負っている。
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