大丸松坂屋、墓石まで売り捌く「外商」の凄み "お得意様"専用のサロンには何があるのか
19世紀の名画は6千万円。ダイヤが散りばめられた時計は3千万円超。金糸で刺繍が施されたあでやかな京友禅は350万円――。
大丸百貨店が4月某日、大阪・リーガロイヤルホテルで開催した大商談会には、普通の人ならそうはお目にかかれない、なんとも豪奢な品々が陳列されていた。これらを品定めするのは、「お得意様」と呼ばれる外商の顧客たちである。
外商とは、その名の通り、主に百貨店の外で行われる販売のことだ。外商員と呼ばれる営業担当者が、企業や個人宅まで出向いて商談をする。近年は、百貨店の中にある「外商ラウンジ」(上写真)や、ホテルの宴会場などで行われる展示会やイベントも活発だ。
無謀とも思える目標を掲げ、攻勢に転じる
外商の歴史は古い。江戸時代に、一部の百貨店の前身である呉服商の番頭が、武家や大商人などの上顧客が欲しいものに目星を付けて客のもとを訪れ、ツケ、つまり掛け売りをしていたのがその発祥だ。現在はクレジット決済が一般的となったが、商売のスタイルは基本的に変わっていない。
大丸松坂屋百貨店を主要子会社に持つJ.フロントリテイリングは、この外商事業の新規客開拓を加速する。同社の山本良一社長は「2016年度の外商事業の売上高を、前期比5.6%増の1600億円にまで持っていきたい」と意気込む。
外商ビジネスは、バブル期に全盛期を迎えたが、平成不況がもたらすデフレ期は冬の時代だった。特にリーマンショック後は市場全体が7%以上落ち込み、大丸松坂屋は2008~2009年に外商員の大規模な削減を行った。
だが、2011年に再び強化へ転じる。山本社長は「外商部門の5%成長」と、当時からすれば無謀とも思える目標を掲げ、2013年には新規顧客開拓部門を設置した。以来、2016年2月期まで連続して市場を上回る高成長を続けている。2016年2月期は、前期比で3%伸ばし、外商売上にあたる「掛け売り高」は1523億円。全体に占める割合は2割にのぼる。現在は、21万件あまりの顧客口座を、600人弱の外商員が受け持つ体制だ。
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