つらい精神的な労働を乗り切る方法 

感情労働の時代

『ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか』などの著書がある武井麻子・日本赤十字看護大学教授は、「医師や看護師などの治療者は、患者と同じ無力感や屈辱感を抱かせられることが多い。その感情に押し潰されて、心が折れてしまう治療者が少なくない」と語る。

さらに最近、問題視され始めているのが、一般企業の職場での感情労働だ。神奈川県勤労者医療生協理事長の天明佳臣医師は、精神や行動に障害を持つ、さまざまな職場の労働者を診療している。その患者の多くが、「感情労働の持続がかかわって倒れたのではないかと思えてならない」と指摘する。

最近の職場の多くは、パソコンが一人一台割り当てられ、隣で働く人の仕事内容がわからない。そういう状況では同僚の助けは期待できず、自分で何とかしなければ、と自分の感情を押し殺して仕事を進める労働者が多い。そうした感情労働的ストレスの持続が、精神や行動の障害につながっているのではないか、というのである。

いま日本の職場では、図にあるように、「いじめ・嫌がらせ」による労働紛争相談が、増加の一途だ。解雇や労働条件の引き下げという明確で深刻な相談の増加が一段落する一方、いじめや嫌がらせといった感情に絡む問題が、職場での紛争の主因となりつつある。職場で働く人の感情を考慮することは、今後ますます重要になっていくだろう。

とはいえ、日本では従来から、「表と裏」「建前と本音」を区別することが当たり前とされてきた。米国のように、それらの区別をあまりせず、感情労働は偽りの自己を強いる不誠実なもの、とだけとらえるような傾向は弱い。

働くうえで、感情をどうコントロールしていけばよいか。上手に感情をマネジメントすることで仕事の成果を高める方法を学ぶとともに、そうした感情労働で疲弊しないための方策を考えていこう。

(本誌:福田 淳、ライター:漆原次郎 =週刊東洋経済2012年12月1日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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